こんにちは。自治体の用地担当として配属されたばかりの皆さん、日々の業務お疲れ様です。
用地買収が完了し、いざ法務局へ登記を嘱託しようとしたとき、上司からこんな指摘を受けたことはありませんか?
「おい、この登記の順番、おかしいぞ! 契約書の日付順(時系列)になってないじゃないか。」
上司の言うことはもっともに聞こえます。お役所の仕事は「起きた順に記録する」のが基本ですからね。
しかし、登記の世界には「時系列と同じくらい大事な、もう一つのルール」が存在します。
今回は、嘱託登記の順序を決める「2つの原則」について解説します。
原則1:中間省略登記の禁止(=時系列通りに記録せよ)
まず、上司が言っていることは「原則論」としては正しいです。これを「中間省略登記禁止の原則」といいます。
どういう意味?
不動産登記法は、権利の変動(所有者が変わったことなど)を、その過程も含めて忠実に公示することを目的としています(民法177条の趣旨、不動産登記法第1条)。
例えば、土地が Aさん → Bさん → 市 と転売された場合。
「どうせ今の所有者は市になるんだから、面倒なBさんへの移転登記は飛ばして、いきなり『A→市』にしよう」
これは認められません。
- × やってはいけない順序:A → 市
- 〇 正しい順序:A → B → 市
このように、「起きた出来事は、日付順(時系列)にすべて登記しなければならない」というのが第1の原則です。
原則2:登記の連続性の原則(=今の記録と一致せよ)
しかし、実務で疑問が生じるのは、この第2の原則、「登記の連続性の原則」を見落とした時です。
これを理解するために、まずは「何も問題が起きないスムーズな事例(成功例)」を見てみましょう。
事例:これが「登記の連続性」だ
【事例:通常の用地買収】
- 現在の登記記録:所有者 A(住所:1番地)
- 事実関係:
- Aさんはずっと1番地に住んでおり、引越しはしていない。
- 5月1日、Aさんは市へ土地を売却した。
- あなたの嘱託書:
- 登記の目的:所有権移転
- 義務者:1番地 A
この嘱託書を受け取った登記官は、以下のように審査します。
登記官の視点(審査のプロセス)
登記官は、あなたの嘱託書と、手元の登記記録(データベース)を「絵合わせ」のように見比べます。
登記官の心の声
「よし、審査を始めよう。
嘱託書には、義務者として『1番地 A』と書いてあるな。印鑑証明書も『1番地 A』だ。
さて、手元の登記記録はどうなっているかな?
……お、こちらも所有者は『1番地のA』だ。
【判定】
名前も住所も完全に一致している。
つまり、登記記録上の人物と、今回の申請人は『同一人物』であると認定できる。
よし、この登記は受理しよう!」
このように、「申請された内容」が「現在の登記記録」と矛盾なくつながること。
これを専門用語で「登記の連続性の原則」と呼びます。これが満たされていれば、登記はスムーズに通ります。
第1回のまとめ
嘱託登記の順序を考えるときは、常にこの2つを意識してください。
- 中間省略登記禁止の原則
- 起きたこと(売買・相続など)は、隠さず時系列通りに全部並べる。
- 登記の連続性の原則
- 並べた時に、前の登記と次の登記の「バトンタッチ(絵合わせ)」が綺麗につながっているか確認する。
「なんだ、当たり前じゃないか」と思いましたか?
しかし実務では、地権者が引越しをしていたり、亡くなっていたりして、この「当たり前(ピタリと一致)」が崩れることが多々あります。
その時、この「連続性」のルールを知らないと、法務局で門前払いを食らうことになるのです。
次回は、最も初心者が陥りやすい罠、「住所変更」の事例で、このルールがどう牙を剥くか解説します。
コメント