前回までは「当事者が同じじゃなきゃダメ」という話でしたが、実はそのルールを無視できる特例が存在します。 それが「抵当権抹消」のケースです。
目次
1. 【事例】親子の土地をまとめて担保にしていた
状況:
- 甲土地(所有者:父A)
- 乙土地(所有者:息子B) この2筆の土地を担保に、銀行からお金を借りていた(共同担保)。 今回、市が両方の土地を買うことになり、銀行の抵当権を抹消したい。
悩むポイント: 「所有者(義務者)が『父A』と『息子B』でバラバラだ。チェックポイント④(当事者の同一)を満たさないから、申請書は2枚必要?」
2. 結論:所有者が違ってもまとめてOK
この場合に限り、1枚の嘱託書にまとめてOKです。 なぜなら、「消そうとしている借金(債権)は1つだから」です。 土地の持ち主が誰であれ、「その借金が返し終わった」という事実は一つ。ならば、一気に消してしまった方が合理的ですよね。
嘱託書の書き方(権利者欄、Aが申請人の場合)
登記申請書
登 記 の 目 的 抵当権抹消
原 因 令和6年6月6日解除
抹消すべき登記 平成11年2月11日受付第100号
権利者(申請人) A
権利者 B
義務者 ◯◯銀行
不動産の表示
甲土地
乙土地
3. 今回の武器(根拠条文・登記研究)
この特例は、法律(規則)で明確に定められています。
不動産登記規則 第35条第10号(要約) 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(共同担保)に関する登記であって、登記の目的が同一であるときは、一括申請できる。
さらに、実務のQ&A(登記研究)でも補強されています。
登記研究558号 所有者の異なる不動産に関する抵当権抹消登記も、同一申請書で申請できる。
【重要注意点】 あくまで「同一の債権(同じ借金)」であることが条件です。 「A土地の住宅ローン」と「B土地の事業ローン」を、たまたま同じ日に消す場合は、債権が別なので一括申請できません。
【第3回のまとめ】
- 「共同担保」の抹消なら、土地の所有者がバラバラでも一括申請できる。
- ただし、担保している「債権(借金)」が同じであることが絶対条件。
次回は、「共有の土地(AさんとBさんの共有地)」を買う場合のテクニックです。
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