はじめに:親切心がアダになる瞬間
相続人に、アメリカ国籍を取得した「日系米人(元日本人)」がいるケース。
あなたは親切心でこうアドバイスしていませんか?
「サイン証明書が必要ですね。アメリカの公証人は英語で怖いでしょうから、『在米日本領事館』に行って取ってきてください。あそこなら日本語も通じますから」
これ、完全にアウトです。
そのアドバイスに従って取得された証明書は、日本の法務局では受理されず、すべて取り直しになります。
結論:国籍で「行く場所」が決まる
ルールは単純明快です。「人種」や「ルーツ」ではなく、「現在の国籍(パスポート)」で判断します。
| 相続人の国籍 | サイン証明書をもらう場所 |
| 日本国籍 (在留邦人) | ◎ 在外日本領事館 (日本の役所の出先機関なのでOK) |
| 米国国籍 (日系人・元日本人含む) | × 在外日本領事館 (権限がないため無効!) ◎ アメリカの公証人(Notary Public) |
いくら「心は日本人」でも、法的には「外国人」です。
「外国人の証明は、その本国の機関(アメリカなら公証人)が行う」のが鉄則です。
解説:なぜ領事館の証明書はダメなのか?
この根拠となる先例がこちらです。
登記研究218号 72頁 / 解説:748号 58頁
【要旨】
在米日本領事館が発行した外国人(日系米人)のサイン証明書及び居住証明を添付した相続登記の申請は、受理されない。
【理由】
外国人の署名証明をする権限は、その本国の官公署等にあり、在外日本公館(領事館)には、外国人を証明する権限はない。
わかりやすく言うと…
日本の領事館は、あくまで「日本人のために、日本の役所の代わりをする場所」です。
日本の公務員(領事)が、権限の及ばない「アメリカ市民」に対して、「この署名は本人のものです」と証明することは、越権行為(権限外)となります。
実践:依頼者への正しい案内
日系米人の相続人には、必ずこう伝えてください。
- 「あなたは法的に『アメリカ人』として手続きをする必要があります」
- 「日本の領事館ではなく、お近くの『Notary Public(公証人)』へ行ってください」
- 「そこでサインをし、Notaryの認証(サインとスタンプ)をもらってください」
補足:どうしてもの場合
「どうしても現地の公証人が不安だ」という場合、日本に来日中であれば、「日本の公証役場」で書類を公証することも可能です。
まとめ:パスポートの色を確認せよ
- 日本パスポート → 日本領事館へ。
- 米国パスポート → 米国公証人(Notary)へ。
「顔が日本人だから」「日本語が話せるから」で判断すると痛い目を見ますよ。
登記研究218p72
在米日本領事館が発行した外国人(日系米人)のサイン証明書及び居住証明を添付した相続登記の申請は、受理されない。
上記についての解説(登記研究748p58)
外国人の署名については、証明をする権限は、当該外国人の本国の官公署等若しくは在日公館であり、在外日本公館には、証明権限はない。したがって、在米の日本領事館が発行した日系米人(歴とした外国人である。)のサイン証明及び住所証明書を添付して相続登記の申請があっても、当該登記申請を受理することはできない。
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