悩み:「遠すぎて行けない」で手続きがストップ
アメリカ在住の日本人から用地を買収する案件。
登記承諾書(または委任状)にサインをしてもらう必要がありますが、こんなやり取りで困っていませんか?
担当者: 「ご本人の署名が必要ですので、お近くの日本大使館か領事館に行って、署名証明をもらってください。」
地主様: 「ええっ!? 領事館なんて、ここから車で5時間もかかるよ! 仕事もあるし、そんな簡単に行けないよ……。」
担当者: 「でも、決まりですので……。」
これでは、いつまで経っても書類は届きません。
疑問:絶対に「日本の領事館」じゃなきゃダメ?
担当者の中には、「日本人の証明なのだから、日本の役所(在外公館)でなければならない」と思い込んでいる方が多いようです。
しかし、結論から言うと、現地の公証人(Notary Public)の認証でも全く問題ありません。
わざわざ遠くの領事館に行かなくても、自宅や職場の近くで手続きを完結させることが可能です。
根拠:先例で認められています
現地の公証人による認証が有効であることは、古い先例で既に確立されています。
昭和33年8月27日 民事甲第1738号 ほか
(要旨)現地の公証人(Notary Public)の認証を受けた書面であっても、登記手続きにおいて適格性を有する。
つまり、法務局は「アメリカの公証人が『本人のサインだよ』と言っているなら、それを信用しますよ」というスタンスなのです。
なぜ「領事館」と言いたくなるのか?(登記研究の記載)
では、なぜ「領事館必須」という誤解が広まるのでしょうか。
その原因の一つに、以下のような記述があるからかもしれません。
登記研究254号 55頁
「(できれば、わが在外公館から証明を受ける方が、望ましいといえよう。)」
確かに、日本語が通じる日本の機関の方が「望ましい」のは事実です。
しかし、これはあくまで「理想論(ベター)」であり、「必須条件(マスト)」ではありません。
現地の公証人でも法的な効力(適格性)には何ら変わりありません。
まとめ:相手の負担を減らす提案を
- 原則(理想): 日本大使館・領事館での署名証明
- 例外(実務的): 現地の公証人(Notary Public)による認証
どちらも法的には有効です。
相手方が「領事館は遠い」と難色を示した場合は、「では、お近くのNotary Public(公証人)で認証を受けていただければ結構ですよ」と案内してあげてください。
その一言で、止まっていた案件が劇的に動き出しますよ。
【参考】アメリカの公証人(Notary Public)はどれくらい身近なの?
「現地の公証人って言っても、探すのが大変なんじゃないの?」
そう思うかもしれませんが、実は日本とアメリカでは公証人の数とアクセスのしやすさが桁違いです。
1. 人数が違う(数百人 vs 数百万人)
日本の公証人は、元裁判官などが任命される特別な職務で、全国に約500人しかいません。
一方、アメリカの公証人(Notary Public)は、一定の講習等を受ければ資格を取得できるため、全米になんと約440万人以上も存在します(全米公証人協会等のデータより)。
「数十万人に1人」の日本と違い、「数十人に1人」レベルで存在する身近な資格者なのです。
ソース:National Notary Association (NNA) – Notary Census
2. どこにいるの?(コンビニ感覚で頼める)
アメリカでは、以下のような「ごく普通のお店」に公証人が常駐しており、予約なしでサイン証明をしてくれることが一般的です。
- 配送業者(The UPS Storeなど): 全米のほとんどの店舗で公証サービスを提供しています。
- 銀行(Bank of Americaなど): 多くの支店に公証人がおり、口座を持っていれば無料で対応してくれることもあります。
- 不動産会社・保険代理店: スタッフが資格を持っていることが多いです。
「領事館へは飛行機で行く距離だが、Notaryなら近所のショッピングモールにいる」
これがアメリカの実情です。ぜひ安心して現地手続きを案内してください。
ソース:The UPS Store – Notary Services
(サイトより引用:Come into a location near you to get documents notarized. … We have more than 5,000 locations…)
ソース:Bank of America – Notary Services
(サイトより引用:Bank of America offers notary services at most financial centers…)
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