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【用地実務】戸籍に誤記発見!「二男が三男に」…これって裁判所の訂正必須ですか?

こんにちは。
用地買収の現場、お疲れ様です。

戸籍を集めて、いざ相続登記!という段になって「あれ?戸籍の記載がおかしいぞ…」と気づいた時の、あの血の気が引くような感覚、嫌ですよね。

特に「二男のはずが三男になっている」「名前の漢字が違う」といったミスは、古い戸籍では意外とよくある話です。これを「全部家庭裁判所で直してきてください」と地権者と調整するとしたら、買収スケジュールは数ヶ月遅れますし、最悪の場合、地権者の協力も得られなくなるかもしれません。

今回は、そんな「戸籍の誤記」に直面した時の、実務的な突破口(便宜受理)について解説します。

目次

結論:原則として、そのまま受理される可能性が高い(〇)

結論から言うと、単なる書き間違いであることが明白で、誰が相続人であるか(同一性)が確認できるレベルであれば、家庭裁判所での戸籍訂正は不要です。

法務局は、「便宜受理(べんぎじゅり)」という運用で、そのまま登記を通してくれる可能性があります。

ただし、「誤記のせいで、他にも相続人がいるように見えてしまう」ような場合はNGです。根拠となる先例(ルール)を見ていきましょう。

解説:なぜ「訂正なし」でいけるのか?

用地担当者として、上司や法務局、あるいは地権者に説明するための「根拠」を整理します。これらは交渉の武器になりますので、メモしておいてください。

1. 根拠となる先例・通達(武器になる数字)

以下の先例は、いずれも「実態として本人であることが間違いないなら、形式的なミスには目をつぶろう」という姿勢を示しています。

ケース結論根拠(先例・登記研究)
二男 ⇔ 三男受理される登記研究197号
続柄が誤っていても、そのまま受理して差し支えない。
二女 ⇔ 三女受理される登記研究183号
関係戸籍全体から見て同一人物と認められるなら、訂正なく受理してよい。
カナ ⇔ 漢字受理される昭44.12.25 民事甲第1270号
「ノブエ」と「延枝」のような誤記でも、相続人本人と確認できれば受理してよい。

【NGなケース(ダメな例)】

  • 登記研究175号 / 463号
    戸籍の記載から「相続人を確定することができない」場合(=誤記のせいで、全く別人がもう一人いるかのように見える場合など)は、訂正しないと受理されません。

2. 条文から読み解く「実務の意味」

なぜ、戸籍の記載が間違っていても許されるのでしょうか? ここ「法務局がどう捉えているか(実務上の解釈)」として理解しておくと、説明がスムーズになります。

【検索・要約した根拠法令】

民法 第887条(子及びその代襲者等の相続権)など

  • 条文の要約: 民法上、第一順位の相続人は「被相続人の子」であると規定されています。
  • 実務での捉え方: ここで重要なのは、法律が求めている要件は「被相続人の子である(血縁がある)」という事実そのものであり、「何番目の子か(続柄の記載)」という形式的な番号ではない、という点です。

あくまで実務上の運用においてですが、「『二男』か『三男』かという記載ミスがあっても、その人が『被相続人の子』である事実に変わりはなく、相続権(法定相続分)そのものには影響しない」という判断が背景にあると考えられます。

そのため、登記手続きにおいては、「他の資料から本人(相続人としての地位にある者)であると特定できるなら、誤記はあくまで形式的なミスに過ぎない」として、柔軟に受理(便宜受理)される傾向にあるのです。

実務フローと注意点

では、実際に現場でどう動くべきか、フローを確認しましょう。

STEP 1: 戸籍全体の整合性をチェックする

誤記を見つけたら、まずは落ち着いて他の戸籍(除籍謄本、改製原戸籍)と見比べてください。

  • 出生から死亡まで繋げたとき、「三男」と書かれているが、兄が一人しかおらず、どう見ても「二男」である。
  • 前後の戸籍では正しい漢字が使われている。

このように「誰がどう見ても書き間違い(誤記)だ」と説明できる状態であれば、勝算ありです。

STEP 2: 法務局に事前相談(「打診」)をする

ここが最重要です。いきなり申請を出すのではなく、管轄の法務局に「事前相談」に行きましょう。

トーク例

「嘱託登記を予定している〇〇市の用地課です。相続人の一人について、戸籍上『三男』となっていますが、兄は一人しかおらず実態は『二男』です。登記研究197号等の先例に基づき、このまま申請を受理していただけますか?」

この「先例を知っている」ことを匂わせつつ相談することで、法務局側もスムーズに検討してくれます。

STEP 3: 地権者への説明

法務局から「OK」が出れば、地権者に安心させてあげてください。

NGな説明

「戸籍が間違ってるので、家庭裁判所に行って直してきてください。(期間:数ヶ月)」

OKな説明

「戸籍に少し記載ミスがありましたが、こちらで法務局と調整し、このまま手続きできるように手配しました。 裁判所の手続きは不要ですのでご安心ください。」

これで、地権者からの信頼度は爆上がり!?です(笑)。

注意点:こんな時は「訂正」が必要かも

以下の場合は、上記の先例が使えず、家庭裁判所での訂正(戸籍訂正許可申立)が必要になるリスクがあります。

  1. 「行方不明の兄」がいるように見える場合
    例えば、「三男」と書かれていて、戸籍上に「長男」しかいない場合。「二男はどこに行った? 本当に実在して、行方不明なのでは?」と疑われる余地がある場合は、法務局が慎重になり、訂正を求められることがあります。
  2. 氏名が全く別人のように違う場合
    「太田」と「大田」程度なら通ることもありますが、読み方も字形も全く違う場合は、本人確認ができないため訂正が必要です。

※家庭裁判所での戸籍訂正は、申立てから許可審判、役所への届出まで早くて1〜2ヶ月、長引くと半年かかります。年度末の買収案件では致命傷になりかねないので、早めの判断が必要です。

まとめ

  • 戸籍の「二男・三男」や「明白な誤字」のミスは、家庭裁判所の訂正なしで受理される可能性が高い
  • 根拠は「登記研究197号」「昭44.12.25 民事甲第1270号」。
  • 民法上、「子」である事実が確認できれば、続柄の番号ミスは相続権に影響しない。
  • 必ず法務局へ「事前相談」を行い、言質を取ってから進めること。

現場では「完璧な書類」が揃うことの方が稀です。

「間違いがあるからダメだ」と思考停止せず、「この間違いは実務上許容される範囲か?」と考えるのが、プロの用地担当者への第一歩です。

応援しています!

参考資料

被相続人の戸籍の記載に明白な誤りがあると認められる場合、それが相続関係に影響を及ぼさないような軽微な誤りでない限り、戸籍訂正後の謄本を添付しなければ相続登記の申請を受理すべきではない。(登記研究175号)

相続登記申請書に添付の戸籍書類において相続人中父母との続柄が二女とあるべき者で、三女と記載された者がある場合でも、関係戸籍全体から二女であることが認められるときは、戸籍を訂正することなく、当該申請を便宜受理してさしつかえない。(登記研究183号)

相続人の続柄を「二男」とすべきを「三男」と誤って記載されている戸籍の謄本を添付して相続登記の申請があった場合には、そのまま受理してさしつかえない。(登記研究197号)

「ノブエ」とすべきところ、「延枝」と記載されている戸籍謄本等を添付して相続登記申請があった場合、相続人であることが確認できる場合は受理してさしつかえない。(昭44.12.25、民事三発第1270号民事局第三課長電報回答・先例集追Ⅴ193頁、登記研究340号)

戸籍の記載に誤りがあるため、戸籍の記載からは相続人を確定することができない場合には、戸籍訂正後でなければ相続登記申請を受理することはできない。(登記研究463号)

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