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【海外在住の日本人】一時帰国中に手続きしたい! 日本の公証役場で「サイン証明」は取れる?

目次

はじめに:一時帰国のついでに登記を済ませたい

「アメリカ在住の姉が、墓参りのために来日します。そのついでに、実家の不動産の名義変更(嘱託登記)の手続きを済ませたいのですが……」

海外在住の日本人が登記義務者(権利を失う側)となる場合、通常は「印鑑証明書」の代わりに、領事館などが発行する「署名証明書(サイン証明)」が必要です。

しかし、せっかく本人が日本にいるのに、わざわざアメリカ大使館に行ったり、アメリカの公証人を探したりするのはナンセンスですよね。

「日本にいる間に、日本の公証役場でサイン証明を取れないか?」

今回は、この実務上の疑問にお答えします。

結論:日本の公証役場で「できます」

結論から申し上げますと、日本の公証人による認証(署名証明)で、印鑑証明書の代わりとして登記に使用することが可能です。

かつては消極的な見解(昭和36年先例)もありましたが、現在は「可能(積極)」であるという見解が定着しています。

根拠となる文献・先例

専門書および法務省の回答において、以下のように解説されています。

『改訂 渉外不動産登記』(藤原勇喜 著)P148

外国在住の日本人が一時帰国中にその所有不動産を処分して登記を申請する場合に、(中略)かつて先例は消極に解したが、現在は積極に解している。

昭和58年5月18日 民三第3039号 回答

(要旨)海外在住者が帰省する機会をとらえて登記手続きをする場合、日本の公証人が委任行為を公証し、それをもって登記申請することは可能である。

解説:なぜ日本の公証人でOKなのか?

理由は合理的です。

そもそも、海外の公証人(Notary Public)の証明ですらOKとしているのに、日本の公務員に準ずる立場である日本の公証人の証明がダメな理由がありません。

  1. 本人の確認ができる日本の公証人は、パスポート等により厳格に本人確認を行います。
  2. 利便性の確保: 日本国内にいる間に手続きができないとすると、印鑑登録もできない(住民票がない)ため、手続きが著しく困難になります。

具体的な手続きの流れ

  1. 準備: 登記承諾書(または委任状)を作成する。
  2. 訪問: 本人が日本の「公証役場」へ行く。
  3. 持参物: パスポート(本人確認書類として必須)。
  4. 認証: 公証人の面前で書類に署名(サイン)し、認証を受ける。
  5. 提出: 認証を受けた書類を、印鑑証明書付きの承諾書として法務局へ提出する。

注意点:念のため事前相談を

法理上は「可能」で間違いありませんが、窓口の登記官によっては、この昭和58年の先例(依命回答)をパッと思い出せない可能性があります。

また、登記承諾書に添付する印鑑証明書の趣旨と、売買等の印鑑証明書の趣旨は厳密には異なりますが、「本人の真正な意思確認」という点では共通しているため、同様に扱って差し支えないと考えられます。

トラブル防止のため、「一時帰国中の当事者が、日本の公証役場で認証を受けた書類を提出します」と、事前に管轄の法務局へ一報入れておくとスムーズです。

まとめ

  • 海外在住者でも、一時帰国中に日本の公証役場が使える。
  • パスポートを持参し、公証人の面前でサインすればOK。
  • 根拠は昭和58年の先例変更による。

「わざわざアメリカに戻ってから書類を送ってもらう」という手間を省くことができますので、ぜひ活用してください。

改訂 渉外不動産登記(著者 藤原勇喜)P148

外国在住の日本人が一時帰国中にその所有不動産を処分して登記を申請する場合に、印鑑証明書にかえて本人の署名及び拇印に相違ない旨の日本公証人の署名証明書を添付して申請することができるか否かについては、かつて先例は消極に解した(注12)が、現在は積極に解している(注13)。これは、日本の公証人作成の委任公正証書により登記申請人の意思は確認できること、在外居住者は本邦内にある間であっても印鑑証明制度を利用できないこと、すでに外国公証人による証明を認めていること、などの理由によるものと考えられる。

注12 昭和36,10、25民甲2194民事局指示(参考先例13)
注13 昭和58、5、18民三第3039民事局第三課長依命回答(参考先例14)。日本国内に住所を有していない者が、本邦内にある場合に日本の公証人がその者の委任行為を公証することができることについては特に問題はないと考えられるが、この場合の本人確認の方法は、公証人法第28条2項の印鑑証明書の提出によることができないので、パスポート、身分証明書などにより行うことになろう。

上記「注12」について〜登記研究254 P63

[49] 在外日本人が一時帰国中に印鑑証明書にかえて日本公証人の署名証明書を添付することの可否

 外国在住の日本人が、一時帰国中にその所有不動産を処分して登記を申請する場合、印鑑証明書にかえて、本人の署名拇印に相違ない旨の日本公証人の署名証明書を添付することはできない。
(宇都宮・決議、昭和36・10・25民事甲第2194号、登記研究171号62頁)

上記「注13」について〜(昭和58年5月18日民三第三、039号民事局第三課長依命回答(昭和55年3月18日第二東京弁護士会会長照会))

弁護士法第23条の2に基づく照会について

(在外日本人の委任行為の公証)
 甲は、日本国民であるが、現在メキシコに在住し、日本国内に居住地を有しないものである。このため不動産移転登記をする場合、印鑑証明書の交付を受けることが出来ず、メキシコの日本大使館において、本人の署名捺印である旨の証明をうけるしかない。
 しかし右甲は、日本国に帰省する機会がある。この機会をとらえて不動産の所有権移転登記を済ませたいと考えている。
 ① この場合日本国内の公証人が、右甲の委任行為を公証することが出来るか。
 ② 右委任の公正証書をもって、不動産所有権移転の登記手続をすることが出来るか。

(依命回答) 昭和58年3月18日付け登第79の1085号をもって法務省民事局長あて照会のあった標記の件については、いずれも貴見のとおりと考えます。

昭和33年8月27日民事甲第1738号民事局長心得通達(昭和33年7月30日日本司法書士会連合会理事長照会)

外国在住の日本人が登記義務者として登記を申請する場合の委任状について
標記に関し、別紙甲号のとおり日本司法書士会連合会理事長から照会があり、別紙乙号のとおり回答したので、この旨貴管下登記官吏に周知方しかるべく取り計らわれたい。
(別紙甲号)
アメリカ合衆国人と婚姻し、現にアメリカに居住し、その市民権を得ている(日本国籍はまだ離脱していない)者が、登記義務者として所有権移転登記を代理人によって申請する場合、申請書に、本人が署名した委任状を添付し、右の署名は本人の署名であり、かつ、自己の面前において宣誓した現地公証人の証明を得ておれば、領事その他の日本の出先機関の同様の証明又は委任状における押印ないしその印鑑の証明がなくても、当該登記の申請は、受理されるものと思料いたしますが、いかがでしょうか。
(別紙乙号)
本年7月30日付日司連発第14号でご照会のあった標記の件については、御申越のごとく、申請書に、登記義務者本人が署名した委任状のほか、アメリカ合衆国の公証人(notary public)の面前において右の者が行った自己の署名に関する宣誓口述を証する書面(affidavit、当該公証人の署名に係るもの)が添付されている場合には、登記官吏において、右の委任状及び宣誓口述書における署名につき、その同一性を確認し得る限り(ただし、委任状(power of attorney)自体に、直接公証人において、その委任事項及び署名の真正である旨を証明し、その認証のための印章(seal)が押印されているものについては、同一性確認の問題は生じない。)、所問の登記申請について適用されるべき不動産登記法第35条第1項第5号及び同法施行細則第42条第1項の規定の要件は充たされたものとして、貴見のとおり、取り扱ってさしつかえないものと考えます。なお、右の書面をはじめ、外国文字をもって表示された書面については、その訳文を記載した書面をも添付するものが相当であるから、念のため申し添えます。

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