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その入力、実は不要です!登記義務者の「持分」を書かなくていい理由

目次

はじめに

「嘱託書を作るときは、とにかく丁寧に、情報はすべて網羅すべきだ」

そう思って日々の業務に取り組んでいるあなた、素晴らしいです。その姿勢は公務員の鑑です。

でも、「丁寧すぎるがゆえに、やらなくていい作業をしてしまっている」としたらどうでしょう?

今回は、共有地を買収する際によく見かける「登記義務者(売主)の持分記載」について。

実はこれ、書かなくていいんです。

むしろ書かないほうが、入力の手間も減り、転記ミスのリスクもゼロになります。

根拠となる「登記研究355号」を武器に、嘱託書作成の無駄を一つ減らしましょう。

結論:義務者の持分は「記載不要」

結論から言います。

共有地を買収する場合、登記義務者(地権者)の持分を書く必要はありません。

〇 正しい記載例(シンプル!)

登記義務者  住所 〇〇市〇〇町一丁目1番地

       氏名 法務 太郎

× よくある「やりすぎ」記載例

登記義務者  住所 〇〇市〇〇町一丁目1番地

       持分3分の1  ←これ、要りません!

       氏名 法務 太郎


根拠:登記研究355号を味方につける

上司に「なんで今まで書いていた持分を消すんだ?」と聞かれたら、この先例を示してください。

【登記研究 第355号 】(要旨)

共有不動産につき、共有者の一人を登記義務者として権利の設定もしくは移転の登記申請をする場合には、登記義務者の表示事項中持分の記載を要しない。

【要約解説】

この先例が言っていることは非常にシンプルです。

「すでに登記簿(法務局のデータ)に入っている義務者の持分を、申請書でわざわざもう一回説明しなくていいよ」ということです。

なぜ書かなくていいの?(実務的な理屈)

登記の「目的」欄を見てください。

共有者の持分を買収する場合、目的欄にはこう書きますよね?

  • 登記の目的:〇野〇右衛門持分全部移転

この時点で、「〇野〇右衛門さんが持っている持分(例えば1/3)が、全部動くんだな」ということは特定できています。

法務局の登記官は、現在の登記簿を見て「ああ、〇野さんの持分は1/3だから、この1/3が移転するんだな」と確認します。

だから、義務者欄で重ねて「持分3分の1」と書くのは、情報が重複しており、無意味なのです。

なぜ多くの職員が「書いてしまう」のか?

では、なぜ多くの職員(あるいは前任者)は、不要な持分を書いていたのでしょうか?

理由は明白です。「権利者」の欄とセットで考えてしまうからです。

権利者(取得者)のルールとの混同

不動産登記法上、権利者が2名以上になる場合は、権利者ごとの持分記載が必須です(不動産登記法第59条)。

  • 権利者:これから新しく権利を得る人。どのくらいの割合を得るか明記しないと決まらない。
        👉 持分記載が必要(な場合がある)
  • 義務者:権利を失う人。すでに登記簿に持分が載っている。
        👉 持分記載は不要

この2つを混同して、「権利者に書くなら、義務者にも書いておかないとバランスが悪いのでは?」「丁寧じゃないのでは?」と考えてしまう心理が、不要な入力を生んでいます。

「書いてもいい」けど「書かない」が正解な理由

「でも、書いちゃダメとは言われてないですよね? 親切心で書く分にはいいのでは?」

そう思うかもしれません。確かに、書いたからといって却下されることは(通常は)ありません。

しかし、実務家としては「書かない」ことを強くおすすめします。

理由は「リスク管理」です。

リスク事例:入力ミスによる補正

もし、登記簿上の持分が「300分の100」なのに、あなたがうっかり約分して義務者欄に「3分の1」と書いてしまったら? あるいは単純なタイプミスで「300分の10」と打ってしまったら?

登記官は混乱します。

「あれ? この嘱託書、登記簿と数字が違うぞ。一部移転なのか? 単なるミスか?」

結果、電話がかかってきたり、最悪の場合は「補正(訂正印を押しに来い)」と言われたりします。

書かなくていい情報を書いたせいで、補正のリスクを背負う。

これほどバカらしいことはありません。

まとめ

本日の業務改善ポイントです。

  1. 共有者の持分移転(買収)において、登記義務者の「持分」は記載不要
  2. 根拠は「登記研究355号」。
  3. 「権利者」と違って「義務者」の情報は登記簿ですでに確定しているため、書く必要がない。
  4. 余計なことを書くと、転記ミスのリスクが増えるだけ。勇気を持って削除しよう!

「今まで書いていたから」という前例踏襲をやめるのは勇気が要ります。

でも、その一行を削ることで、あなたの入力時間は短縮され、ミスの確率は減ります。

これからは、義務者欄には「住所と氏名だけ」。

シンプルで美しい嘱託書を作成して、スマートに仕事を終わらせましょう!

参考資料:登記研究355号

登記研究355号
申請書の記載

〔要旨〕 共有不動産につき、共有者の一人を登記義務者として権利の設定もしくは登記申請をする場合には、登記義務者の表示事項中持分の記載を要しない。

共有者の一人を登記義務者として、共有不動産について権利の設定もしくは移転の登記申請をする場合、申請書に当該登記義務者の表示事項として持分の記載は要しないものと考えますが、いかがでしょうか。(長野・登記生)

原則として、持分の記載は要しないものと考えます。参照不登法第39条

登記研究398号

共有名義の土地につき分筆の登記を申請する場合、当該申請書に共有者の持分の記載を要しない。

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