はじめに:その一行、本当に意味がありますか?
「前任者の嘱託書データを整理しているんですが……」
「お、偉いね」
「この『登記完了証の交付を希望します(書面)』という一文、書いてある書類と書いてない書類があるんです。結局どっちが正解なんですか?」
これ、非常によく聞かれる質問です。
結論から言うと、書面(紙)で嘱託書を出しているなら、その一文は不要です。
前任者がなぜ書いていたのかは謎ですが(おそらくオンライン申請の様式と混同したか、念のため書いたか)、法的根拠に基づけば「書く必要のない情報」です。
今回は、書類をスッキリさせるための根拠を解説します。
結論:紙で出せば、黙っていても「紙」で来る
書面(窓口持参や郵送)で嘱託する場合、以下の記載は削除してOKです。
× 書く必要なし
「登記完了証を書面での交付を希望します。」
なぜなら、法律のルールで「紙申請=紙交付」と決まっているからです。
解説:規則182条の「当たり前」を知る
根拠となる条文を見てみましょう。
根拠:不動産登記規則 第182条第1項
(登記完了証の交付の方法)
登記完了証の交付は、法務大臣が別に定める場合を除き、次の各号に掲げる申請の区分に応じ、当該各号に定める方法による。
一 電子申請 (略)
二 書面申請 登記完了証を書面により交付する方法
「実務翻訳」すると…
- 電子申請(オンライン)の場合:データでダウンロードするか、紙でもらうか選べる。(だから希望を書く必要がある)
- 書面申請(紙)の場合:「書面により交付する」と決まっている。
つまり、紙で嘱託書を出している時点で、法務局側は「完了証も紙で作って渡す」ことしかできません。
それなのにわざわざ「書面でください」と書くのは、ラーメン屋でラーメンを頼んで「器に入れて出してください」と言うようなものです。「言われなくてもそうしますよ」という話ですね。
なぜ「前任者」は書いていたのか?
おそらく、以下の理由で記載が残っているのでしょう。
- オンライン申請様式の流用:オンライン申請の場合は「交付方法(送付or窓口orダウンロード)」を選択・記載する必要があるため、その名残で紙申請の様式にも残ってしまった。
- 過剰な丁寧さ:(念のため)「書いておけば間違いないだろう」という心理。
書いてあると「間違い」なのか?
もちろん、書いたからといって法務局から「消してください(補正)」と言われることはありません。意味は通じますし、実害はないからです。
しかし、「余事記載(本来書く必要のないこと)」であることは事実です。
まとめ:プロなら「必要なこと」だけを書く
- 書くべきことは、漏らさず書く。
- 書く必要のないことは、一切書かない。
これが、美しい嘱託書を作成する鉄則です。
余計な情報が混ざっていると、本当に重要な情報が埋もれてしまい、見落としの原因にもなります。
「前任者が書いていたから」と思考停止せず、「根拠(規則182条)があるから削る!」と判断できれば、あなたの実務能力は確実にアップしています。
さあ、その一行、自信を持ってDeleteキーを押しましょう!
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