MENU

「役所の登記=無料」は大間違い? 登録免許税の正しい判断基準

目次

はじめに:お金の話は「根拠」が命

「先輩、今回の登記嘱託書、収入印紙って貼らないですよね?」

用地課に配属されたばかりの新人さんから、よくこんな質問を受けます。 自治体が当事者となる登記(嘱託登記)は、一般的に「税金がかからない」イメージが強いですよね。しかし、すべてが免税になるわけではありません。

もし、本来納税が必要なケースで印紙を貼り忘れると、法務局から「補正(修正)」の電話がかかってきて、急いで納付の手続きに走る…なんてことになりかねません。逆に、不要なのに予算計上してしまったら目も当てられません。

今回は、実務で迷わないための「登録免許税の判断フロー」と、ベテランでもうっかり間違える「相続→移転の条文順序の罠」について解説します。

結論:この「2段階」で判断せよ

登録免許税について迷ったら、以下の順番で考えてください。

  1. 【課税の有無】 そもそも、この登記にお金を払う必要があるのか?
  2. 【納税義務者】 払う必要がある場合、「誰(自治体 or 地権者)」の財布から出すのか?

基本は「権利者が誰か」で見極めます。

ステップ1:納税する必要があるのか?(誰が権利者か?)

(1)登記権利者が「官公署(自治体)」の場合 → 【非課税】

自治体が土地を買収して「所有権移転登記」をする場合、権利を得るのは自治体です。 この場合、法律により納税は免除されます。

ただし、「タダだから何も書かなくていい」わけではありません。嘱託書には「なぜタダなのか」という根拠(免税条項)を書く義務があります。ここを書き忘れると法務局で受け付けてもらえません。

根拠条文:不動産登記規則 第189条第2項 【要約】 官公署が登記を嘱託する場合、その登記が非課税であるなら、その旨(根拠となる法律の条項)を記載しなければならない。

▼ 嘱託書への記載例

「登録免許税 登録免許税法第4条第1項」

(2)登記権利者が「官公署以外(個人・法人)」の場合 → 【課税】

例えば、自治体の土地を住民に売却(払い下げ)する場合、所有権を得る(権利者となる)のは「住民」です。 この場合、たとえ自治体が嘱託書を作って法務局に出すとしても、免税にはなりません。 一般の登記と同様に、登録免許税を納める必要があります。

ステップ2:誰に納付義務があるのか?

「課税される」となった場合、次に問題になるのが「じゃあ、誰が払うの?」です。

(1)法律上の原則:「登記を受ける者」

根拠条文:登録免許税法 第3条(納税義務者) 【要約】 登記等の申請をする人(登記を受ける人)は、登録免許税を納める義務がある。もし、登記を受ける人が2人以上いる場合(売主と買主など)は、連帯して納付する義務を負う。

法律上は「どっちが払ってもいいから、とにかく全額払え(連帯納付義務)」となっており、「『権利者が』払わなければならない」とは明記されていません。

(2)実務上の運用:「利益を受ける者」が負担する

法律上は連帯ですが、実務(慣習)では「登記によって利益を受ける権利者」が負担するのが一般的です。

(3)官公署による「単独嘱託」の場合

ここが現場で悩むポイントです。 協力を求めている場合、「税金だけください」とは言い出しにくいこともあります。

払い下げを求められた場合(住民が権利者): 住民が負担で問題ないでしょう。

住民に土地の交換などの協力を依頼した場合:ケースバイケースとなるでしょう(予算の範囲内で自治体が(便宜上)負担して処理してしまうこともあれば、厳格に地権者に請求することもあるでしょう。)

【うっかりミスをしないように!】「5条」と「4条」の逆転現象

用地買収の現場では、登記名義人が既に亡くなっており、「①相続登記(代位)」をしてから「②所有権移転登記」をするという「2連件」で処理を行うことがよくあります。

この時、嘱託書に記載する「免税の根拠条文」の番号に注意が必要です。 「1件目→2件目」と進むのに、条文番号は「5→4」と数字が小さくなる(降順になる)のです。

1件目:代位による相続登記

通常、個人の相続登記は課税されますが、自治体が公共事業のために代位して行う場合、特別に非課税となります。

根拠:登録免許税法 第5条第1項

2件目:自治体への所有権移転登記

相続人に名義が変わった後、自治体が取得する登記です。

根拠:登録免許税法 第4条第1項

「最初は5、次は4」

コピペで作成していると、うっかり両方「4条」にしてしまったり、「4条→5条」と昇順で書いてしまいがちです。

  • 1件目(相続)= 第5条
  • 2件目(移転)= 第4条

法務局の登記官は、この条文番号が正しいかを必ずチェックしています。「5」から「4」へ、数字が戻るのが正解です。

まとめ

  • 自治体が権利者なら非課税
  • 住民が権利者の場合は注意が必要
  • 相続→移転の連件申請は、「第5条」→「第4条」の順で記載する。
よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次