海外の不動産取引や相続手続きに関わると、必ず出てくるのが「公証(Notarization)」という手続きです。
しかし、一言で「公証」と言っても、書類の種類によって「Acknowledgment(アクノレッジメント)」と「Affidavit(アフィダビット)」の2種類があり、この違いを理解していないと書類が突き返されることもあります。
今回は、日本人には馴染みの薄いこの2つの決定的な違いを、分かりやすく解説します。
はじめに:なぜ2種類あるの?
日本の「印鑑証明書」は最強のツールで、これ1枚あれば「本人が実印を押した=本人の意思である」ことが証明されます。
しかし、サイン社会である欧米には印鑑証明書がありません。その代わりに、公証人(Notary Public)が「確かに本人がサインしましたよ」と証明するシステムがあります。
その証明の仕方が、「本人確認」を重視するか、「内容の真実性」を重視するかで2つに分かれるのです。
1. Acknowledgment(認証/自認)
「私がサインしたことに間違いありません」
- キーワード: 本人確認、自由意思
- 主な用途: 不動産権利譲渡証書(Deed)、委任状(Power of Attorney)、契約書など
- 日本語訳: 認証、面前認証、自認
特徴
書類の内容が正しいかどうかは問いません。「署名したのが本人であること」と「脅されて書いたのではなく、自分の意思でサインしたこと」を証明するものです。
公証人はこう確認します。
「あなたは、この書類に自分の意思でサインしましたか?(Do you acknowledge…?)」
「はい、しました」
※実は、公証人の目の前でサインする必要はなく、すでにサイン済みの書類を持ち込んでも、「これは私がサインしました」と認めればOKな場合が多いです(州法による)。
2. Affidavit(宣誓供述書)
「書かれている内容は真実であると誓います」
- キーワード: 真実性、宣誓(Oath)、偽証罪
- 主な用途: 相続関係説明図の代わり、身分関係の証明、裁判資料など
- 日本語訳: 宣誓供述書
特徴
こちらは「中身」が勝負です。
本人が、神(または良心)に誓って「この書類に書いてあることは嘘偽りありません」と宣誓(Oath/Affirmation)し、その上でサインをします。もし嘘がバレたら、偽証罪(Perjury)に問われます。
公証人はこう確認します。
「あなたは、この記載内容が真実であると誓いますか?(Do you swear…?)」
「はい、誓います」
※こちらは必ず、公証人の目の前で宣誓し、サインしなければなりません。これを「Jurat(ジュラット)」と呼びます。
3. 一目でわかる比較表
| 項目 | Acknowledgment(認証) | Affidavit(宣誓供述書) |
| 証明の対象 | 「本人」と「自由意思」 | 「内容の真実性」 |
| 公証人の役割 | 「この人がサインしたよ」と証明 | 「この人が真実だと誓ったよ」と証明 |
| サインのタイミング | 事前でもOK(面前での自認が必要) | 必ず公証人の目の前で |
| 嘘をついたら? | 書類が無効になる可能性 | 偽証罪に問われる |
| よくある書類 | 権利証書、委任状 | 相続証明、同一人証明 |
実務での注意点:自分で選ばない!
ここが一番重要です。
「どっちの形式で公証すればいいですか?」
これを判断するのは、あなたでも公証人でもなく、「提出先(書類を受け取る相手)」です。
多くの書類には、最初から末尾に公証文言(Certificate)が印刷されています。
- “acknowledged before me…” とあれば Acknowledgment
- “subscribed and sworn to…” とあれば Affidavit
もし白紙の書類に「公証を受けてきて」と言われた場合は、必ず提出先に「Acknowledgment ですか? Jurat (Affidavit) ですか?」と確認してください。ここを間違えると、せっかくアメリカ大使館や公証役場に行っても、書類が受理されない悲劇が起きます。
まとめ
- Acknowledgment は、「私がサインしました」(本人確認)。
- Affidavit は、「神に誓って本当です」(中身の保証)。
似て非なるこの2つ。
「権利を動かすときはAcknowledgment」、「事実を証明するときはAffidavit」という傾向がありますが、必ず提出先の指示に従うのが鉄則です!
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