はじめに:合併から何年経っても出てくる「未処理の土地」
「先輩、用地買収予定地の隣接地を調べてたら、まだ『旧〇〇町』の名義のままでした……」
市町村合併から10年以上経過していても、こうした「名義変更漏れ」の土地は意外と残っているものです。
消滅した自治体から現在の市へ名義を移すには、通常の売買とは違う「一般承継(合併)」の知識が必要です。 今回は、いざという時に迷わない「合併による所有権移転」の書き方を解説します。
結論:原因は「合併による承継」。義務者は「旧町名」でOK!
結論から言うと、このケースは「所有権移転」登記を行います。 (※単なる名称変更ではない点に注意!)
ポイントは以下の3点です。
- 登記原因:合併の「告示があった日」を日付とする。
- 義務者:すでに消滅していても「旧自治体名」を書く。
- 添付書類:官報の写しが必要だが、「事実明白」として省略できる。
解説と根拠:なぜその書き方になるのか?
上司に説明できる「根拠」を押さえておきましょう。
1. 登記原因の日付(地方自治法 第7条)
合併の効力発生日は、関係自治体の申請に基づき、総務大臣が「告示」した日となります。
地方自治法 第7条 (要約)市町村の廃置分合は……総務大臣がこれを告示する。……その告示に載せられた処分は、その告示があった日から効力を生ずる。
したがって、登記原因の日付は「合併の効力発生日(告示日)」となります。
2. 義務者の書き方(不動産登記法 第63条第2項の準用)
通常の書き方:義務者 ◯郡◯町
相続又は法人の合併による登記(不登63Ⅱ)に準じて考えるので、登記義務者ではなく次のように記載しても良いそうです
不動産登記法 第63条第2項 法人が合併により消滅したときは、……登記権利者は、単独で当該権利に関する登記を申請することができる。
-
- 登記権利者 くまのみ市
- 登記名義人 〇郡〇町
- または「(被承継人 〇郡〇町) 承継人 くまのみ市」
3. 添付書類の省略テクニック
本来、合併の事実を証明するために「官報の写し」などを添付します(登記原因証明情報)。 しかし、市町村合併は公知の事実(明らか)であるため、添付を省略することが可能です。
ただし、何も書かないと「添付忘れ?」と思われるので、嘱託書には以下のように記載するのがベテランの作法です。
「登記原因証明情報(〇年〇月〇日官報告示により添付省略)」
実務での記載例
それでは、そのまま使える嘱託書のひな形です。
登記嘱託書
登記の目的 所有権移転
原 因 平成〇年〇月〇日合併による承継(※1)
権 利 者 くまのみ市
義 務 者 〇郡〇町(※2)添付書類 登記原因証明情報(平成〇年〇月〇日官報告示により添付省略)
(※1)日付の注意点 登記簿上の日付ではなく、総務大臣による「合併の告示があった日」を記載します。
(※2)義務者の書き方 義務者の欄は「登記名義人 〇郡〇町」としてもOKです。どちらで出すかは担当者の好みです。
現場での注意点(ヒヤリハット)
- 「名称変更」と混同しない! 「登記名義人名称変更」ではありません。今回は、A町とB町が合併してC市になったような権利の主体が変更したケースなので、「所有権移転」になります。間違えないように!
まとめ:古い名義も怖くない!
合併による承継登記は、頻繁にある業務ではありませんが、いざ直面すると「どう書くんだっけ?」と手が止まりがちです。
- 原因は「合併による承継」。
- 義務者は「旧町名」。
- 添付書類は「官報告示により省略」と記載。
この3点を覚えておけば、急な案件でもサクッと処理できます。
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