はじめに:登記には「不要」ですが…
「先輩、今回の相続人さんたち、『法律通り均等に分けたい』と言っています。法定相続分での登記なら、遺産分割協議書はいらないですよね?」
その通りです。
法定相続分(例:兄弟3人で1/3ずつ)で登記を入れる場合、法務局に提出するのは「戸籍謄本」だけでOK。遺産分割協議書は提出不要です。
しかし、ここで手を抜くと後が怖いのが用地の現場。
「やっぱり俺が多くもらうはずだった」「勝手に登記された」と後から揉めないために、「全員で話し合って、あえて法定相続分に決めました」という証拠(書面)を残しておくニーズは意外と高いのです。
結論:登記には使わないが、お守りとして作成する
- 法務局への提出: 不要(添付しなくても登記は通ります)。
- 作成のメリット: 相続人間の「合意」を可視化し、将来の紛争を予防できる。
もし地権者から「どう書けばいいの?」と聞かれたら、以下のひな形を案内してあげてください。
【ひな形】法定相続分による遺産分割協議書
通常の協議書は「長男が全部取得する」といった内容が多いですが、こちらは「法定相続分(持分)で取得する」と明記するのがポイントです。
遺産分割協議書
令和◯年◯月◯日死亡した被相続人 法務太郎 の遺産については、相続人全員の協議の結果、各相続人がそれぞれ次のとおり遺産を取得することに決定した。
1 下記(1)の不動産は、長男 法務一郎、長女 相続促子 及び 二男 登記進 の3名が、それぞれ各不動産の3分の1の持分を取得する。
(1)不動産の表示
所 在 くまのみ市○○町一丁目
地 番 10番
地 目 宅地
地 積 100.00平方メートル
2 前項記載の不動産以外の遺産(預貯金、債務を含む。)は、上記3名の相続人が各遺産につき各3分の1ずつを取得する。
以上のとおり協議が成立したので、相続人全員が署名押印した本協議書3通を作成し、各相続人において各1通を保有するものとする。
令和◯年◯月◯日
住所 くまのみ市○○町○番地
法務 一郎 ㊞
住所 くまのみ市△△町△番地
相続 促子 ㊞
住所 くまのみ市××町×番地
登記 進 ㊞
解説:実務担当者が知っておくべきポイント
1. なぜ「共有」にするのか確認を
この協議書を作って登記をすると、土地は「3人の共有名義」になります。
用地買収の実務として、共有地を買うには「3人全員の契約書への実印」が必要になり、事務処理が3倍大変になります。
「本当に共有にしていいんですか? 代表して誰か一人が相続して、代償金(現金)で分ける方法もありますよ」
と、作成前にアドバイスしてあげるのが、本当の意味での「親切」かもしれません。
2. 印鑑証明書は必要?
この協議書を「法務局に提出しない」のであれば、押印するハンコは実印である必要も、印鑑証明書の添付も必須ではありません(認印でも私文書として成立します)。
しかし、将来のトラブル防止という目的を考えると、「実印 + 印鑑証明書」で揃えておくのがベストです。
まとめ:不要な書類にも意味がある
- 法定相続分の登記に、遺産分割協議書は添付不要。
- しかし、「家族の合意の証」として作成することは推奨される。
- 作成する場合は、「持分◯分の◯を取得する」と明記する。
「法律上いらないから作らなくていいですよ」と切り捨てるのではなく、「もしご不安なら、こういう書き方で残しておくと安心ですよ」と提案できる。
そんな幅のある対応ができるようになれば、地権者からの信頼もぐっと深まりますよ。
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