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【登記原因証明情報】実印は必要? 日付はいつ? 意外と知らない「作成ルール」の常識・非常識

登記原因証明情報(以下、原因情報)は、平成17年の不動産登記法改正で導入された概念ですが、実務では「ハンコは実印?」「日付はどうする?」といった疑問が絶えません。

今回は、登記研究(730号・735号)の質疑応答をベースに、原因情報の作成ルールを整理しました。

目次

1. ハンコと作成者:誰がどう押す?

原因情報(報告形式)を作る際、一番気になるのが「誰のハンコが必要か」です。

Q1. 誰が作成名義人になるべき?

A. 「登記義務者(権利を失う人)」だけで足ります。

共同申請(嘱託)であっても、権利者(もらう人)の署名押印は必須ではありません。

「私は確かに売りました」という義務者の意思確認ができれば、登記官としてはOKだからです。(登記研究735号p84)

Q2. 実印で押す必要はある?

A. 原因情報「単体」なら、認印(または署名のみ)でOKです。

法律上、原因情報に実印を押す義務はありません。

また、本人が署名(サイン)をした場合、押印すら不要とされています。(登記研究735号p84)

【最重要】ただし「承諾書」とセットなら実印!

ここが最大の落とし穴です。

嘱託登記の実務では、「登記原因証明情報 兼 登記承諾書」という合体版の書類をよく使いますよね。

  • 原因情報パート: 認印でOK
  • 承諾書パート: 実印+印鑑証明書が必須

結果として、「兼」の書類を作る場合は、実印を押さなければなりません。

「原因証明情報は認印でいいって聞いたぞ!」と勘違いして承諾書に認印を押すと、補正(やり直し)になりますのでご注意ください。

2. 形式:紙は一枚じゃなきゃダメ?

Q3. 複数の書類に分かれていてもいい?

A. OKです。全体として証明できていれば問題ありません。

「一つの書面」である必要はありません。

典型例が「相続登記」です。

  • 戸籍謄本(相続人の特定)
  • 遺産分割協議書(誰が取得したか)

これらは別々の書類ですが、セットにして提出することで、全体として「相続という登記原因」を証明する情報となります。(登記研究735号p77)

3. 日付:いつの日付を書く?

Q4. 「作成年月日」は「売買日」と同じにする?

A. いいえ、同じである必要はありません。

原因情報には2つの日付が登場します。

  1. 登記の原因となる日(売買日など):実際に権利が動いた日(例:9月1日)。これは事実なので動かせません。
  2. 作成年月日:その書類を作って署名した日(例:9月10日)。

「9月1日の売買について、9月10日に報告書を作った」というのは自然なことですので、日付がズレていても有効です。(登記研究730号p95)

基本的には「原因日(売買日)と同日か、それ以降の日付」であれば問題ありません。

まとめ:チェックリスト

原因情報を作成・受領する際は、以下のポイントを確認してください。

項目ルール(報告形式の場合)実務上の注意
作成者登記義務者のみでOK権利者の署名はあっても邪魔にはならない。
押印認印(または署名)でOK「登記承諾書」を兼ねる場合は必ず実印!
枚数複数に分かれてもOK既存の契約書+不足事項の報告書でも可。
日付権利変動日と違ってもOK「作成日」は「原因日」以降の日付にする。

特に「承諾書を兼ねるかどうか」でハンコの重みが変わります。

用地買収の実務では「兼」で作ることがほとんどですので、「基本は実印」と覚えておくのが安全です。

登記研究735p84〜

(五)登記原因証書の適格性
旧法における登記原因証書として認められていた登記の原因となる法律行為を証する売買契約書、設定契約書等の処分証書は、引き続き登記原因証明情報としても認められることになる。すなわち、旧法における登記原因証書の適格性についての考え方は、新法における登記原因証明情報の適格性についても、おおよそ当てはまるものと考えられる。
(中略)
1 登記原因を証する書面については、それが真正に成立したことを証明する印鑑証明書等の添付は必要とされておらず、判例上も、登記原因を証する書面となるためには、一応登記原因を証するに足りると認められる書面であればよく、捺印があることは要件ではないとされている(大正9年11月24日大審院判決)。したがって、改印前に作成した登記原因証書について、改印後の印の押印がされていなくても、その適格性に問題はない(質疑応答1)。
ところで、新法における共同申請の場合の登記原因証明情報については、必ずしも登記権利者又は登記義務者双方の名義で作成されなければならないというわけではなく、登記官が登記原因の存在を確認するためには、最低限、申請された登記により「直接に不利益を受ける登記名義人」(法2条13号)である登記義務者の関与があれば足りると解される。すなわち、共同申請において、登記原因を証するといえるためには、少なくとも、登記義務者が、登記原因の内容を確認して、登記原因の内容が記載されている書面に署名若しくは記名押印し、又は登記原因の内容が記録されている電磁的記録に電子署名(令12条)を行い、その電子証明書(令14条)と併せて提供することで足りるということになる。したがって、登記原因証明情報の提供に際して、登記権利者の関与が必ずしも必要ないとすれば、もっぱら登記義務者(設定者)のみの名義で作成される抵当権設定登記における差入証方式の設定契約書、あるいは、いわゆる売渡証書のように登記申請用に当事者が作成した情報であっても、原因行為の存在とこれに基づく物権変動が生じたことを内容するもので、かつ、登記義務者がその内容を確認して署名押印又は電子署名したものであれば、登記原因を証する情報になるものと解される。
さらには、名あて人が法務局となっている報告形式の登記原因証明情報を提供する場合の作成名義人についても、常に登記権利者及び登記義務者の共同である必要はなく、登記義務者が作成名義人になっていれば足りるのであって、当該作成名義人の署名があれば押印は必要ない(記名の場合には押印が必要であると解される。)

登記研究735p77〜

3 登記原因証明情報は、必ずしも一つの書面である必要はなく、複数の書面を併せて全体として当該登記の申請に係る登記の原因を証するものであれば差し支えない。
(中略)
そこで、例えば、相続を原因とする所有権移転登記を申請する場合に添付する戸籍謄本及び当該遺産分割協議書は、これらを併せて登記原因証明情報となる(以下省略)

登記研究730p95

「登記原因」とは、「登記の原因となる事実又は法律行為」をいう(法5条2項)ものとされている。したがって、登記原因証明情報とは、物権変動の原因行為とこれに基づく物権の変動という二つの要素から構成され、この二つの要素を証明する情報であり、登記の原因となる事実又は法律行為に該当する事実並びにこれに基づく権利の変動が生じたこと及びその時期が具体的に記録されていることを要する(作成の日付は、権利の変動当時である必要はない。)

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