海外在住者との不動産取引では、郵送の日数や時差があるため、国内取引のように「決済当日に書類作成・即引き渡し」というわけにはいきません。
特に役所が相手の場合、「市長決裁が下りるまで日付が確定しない」という事情も絡み、「日付を空欄(ブランク)のまま認証してもらってもいいのか?」という疑問が必ず湧いてきます。
今回は、この「ブランク認証」の有効性と、それを裏付ける法的ロジックについて解説します。
結論:問題ありません
結論から言うと、売買日付を空欄(ブランク)にした状態で認証を受けた宣誓供述書であっても、登記手続きにおいて有効な書面として扱われます。
実務上、認証日(アメリカでサインした日)が、後から記入された売買日(日本での決済日)より前であっても、法務局から指摘されて補正になったという話はまず聞きません。
理由1:実務上の要請(物理的に無理)
海外在住者との取引では、書類の往復に数週間かかるのがザラです。
「決済日(売買日)が確定してから書類を送り、その当日に認証を受けて、即座に日本へ届ける」ことは、物理的に不可能です。
そのため、実務では「決済日をブランクにして事前に認証を受け、決済等の条件が整った段階で日付を補充する」という運用が広く認められています。
理由2:法的ロジック(停止条件付法律行為)
「まだ売買していない(未来の話)のに、『売買した』という過去形の宣誓をするのはおかしいのでは?」
論理的にはその通りですが、法的にはこれを「停止条件付法律行為」として構成することで説明がつきます。
つまり、本人の意思は以下の通り解釈されます。
「(市長決裁が下りて)正式に売買契約が成立したならば、不動産の所有権を移転させることを、現時点(認証日)において承諾します」
これは民法127条の考え方であり、この解釈により、日付が後から決まる場合でも書面の適格性に問題はないとされます。
民法 第127条(条件が成就した場合の効果)
停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
専門書の裏付け
渉外不動産登記のバイブル的な書籍でも、同様のケース(委任状の事例)について「適格性に問題はない」と明記されています。
『渉外不動産登記の法律と実務』(山北英仁著・日本加除出版)P204
イ 非居住者売主が来日しない場合
(中略)決済前にこれらの手続をするために決済の日をブランクにして認証するのが実務であるが、将来を停止条件として委任しているものであり委任状としての適格性に問題はないし、登記申請実務においても適格性は認められている。
本書では「委任状」に関する記述ですが、登記原因証明情報兼登記承諾書としての「宣誓供述書」においても、同様の理屈(将来の売買成立を条件とする意思表示)が適用されると考えられます。
まとめ:安心して「ブランク」で送ろう
海外取引において、すべての日付を確定させてから動くのはリスクが高すぎます(書類不備で再送となれば、決済が数週間遅れます)。
- 市長決裁前でも、書類の手配は進めてOK。
- 日付はブランクのまま、現地の公証人に認証してもらう。
- 日本に届いて決裁が下りたら、日付を補充して登記申請。
この運用で実務は回っています。
ただし、管轄の法務局や担当官によっては細かい見解が異なる可能性もゼロではありません。「念のため」事前に相談しておくと、より盤石でしょう。
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