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【相続登記】戸籍や遺産分割協議書は使い回せる? 「援用」のOK/NGラインを完全整理

相続登記を連件(同時)で申請する場合、大量の戸籍謄本や遺産分割協議書を、申請書の数だけ用意するのは大変ですよね。

「これ、1通を使い回し(援用)できないの?」という疑問に対し、登記研究の質疑応答をベースに、現在の実務の「OK/NGライン」を整理しました。

目次

結論:原則「援用OK」だが、例外に注意

ざっくり言うと、以下のようになります。

  • 戸籍謄本等援用できる
  • 遺産分割協議書援用できる
  • 相続関係説明図記載内容が同じなら、援用できる

昔の先例では「申請人(相続人)が違うなら援用不可」とされていましたが、現在は申請人の負担軽減のために取扱変更がなされています。

それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。

1. 遺産分割協議書・戸籍謄本(バラバラの相続人が申請する場合)

ケース

亡くなった父の遺産について遺産分割協議を行い、

  • 土地Aは、長男が相続
  • 土地Bは、二男が相続することになりました。長男と二男が、同時に(連件で)それぞれの相続登記を申請する場合、1通の遺産分割協議書(および戸籍一式)を援用できるでしょうか?

答え:援用できます(便宜上の取り扱い)

本来、添付書類の援用は「申請人が同一であること」が原則です。

かつての質疑応答(下記Q22)では、長男と二男は別人のため「援用できない」とされていました。

しかし、現在は「申請人の負担軽減」の観点から、援用OKとなっています。

登記研究728号 解説(質疑応答26・27の要約)

遺産分割協議書は相続人全員で作成したものであり、戸籍等は分量が多い。

よって、各相続人がそれぞれの不動産を単独相続する登記を連件で申請する場合、申請人が異なっていても、便宜、前件の添付書面を援用して差し支えない。

2. 相続関係説明図(記載内容が同じ場合)

ケース

上記の例(長男と二男が別々の不動産を相続)で、「相続関係説明図」も援用できるでしょうか?

答え:援用できます(ただし書き方に注意)

前件に添付した相続関係説明図で、後件の相続関係も明らかにできるなら、援用可能です(質疑応答28)。

【実務上の注意点:相と分割】

厳密な実務のルールでは、その登記で不動産を取得する人の横に「(相)」、それ以外の人に「(分割)」と記載します。

  • 長男の申請書につける図 → 長男(相)、二男(分割)
  • 二男の申請書につける図 → 長男(分割)、二男(相)

このように厳密には「図の中身」が異なるため、本来は別々に作成すべきです。

しかし、登記研究の解説では、同一の相続関係説明図を用いても差し支えない(援用してよい)とされています。

3. 【NG事例】数次相続(おじいちゃん→父→子)

ケース

「祖父」名義の土地と、「父」名義の土地があります。

父が亡くなったため、孫である「子」が、祖父と父の土地の相続登記を連件で申請します。

この時、相続関係説明図は援用できるでしょうか?

答え:援用できません(別々に作成が必要)

これは「被相続人(亡くなった人)」が異なるためです。

  • 1件目:被相続人「祖父」の相続関係説明図
  • 2件目:被相続人「父」の相続関係説明図

これらは記載すべき内容(家系図の頂点)が全く異なるため、使い回すことはできません。

登記研究728号 解説(質疑応答23)

甲から乙、乙から丙へと順次相続が行われている場合……被相続人が異なる、すなわち相続関係説明図に記載すべき事項が異なることになることから、その援用は認められない。


まとめ

書類の種類援用の可否根拠・理由
戸籍・遺産分割協議書OK申請人の負担軽減のため(便宜上の取扱い)。
相続関係説明図
(同一の被相続人)
OK厳密には「(相)」の記載が異なるが、援用可。
相続関係説明図
(数次相続)
NG被相続人が異なり、図の内容が別物になるため。

「申請人が違うから全部コピーしなきゃ……」と諦めず、援用できるものは賢く援用して、書類の厚みを減らしましょう!

登記研究728p70〜

質疑応答26(本誌161号47頁)

遺産分割により相続人に各別に帰属した不動産について相続登記を申請する場合に、前件に添付した遺産分割書を同時提出の他の相続登記に援用することができる。

質疑応答27(本誌164号46頁)

遺産分割の協議により、相続人甲は不動産Aを、乙はBを、丙はCをそれぞれ相続し、右の三名が同時に相続登記を申請する場合、右の相続関係を証する書面を最初の申請に添付し、あと二個の申請に便宜これを援用することができる。

質疑応答28(本誌250号70頁)

同時に数個の相続登記を申請する場合、申請書に添付した相続関係説明図により相続関係が明らかであるときは、相続関係説明図を前件に添付し、他の申請書にはその旨を付記して援用してよい。

質疑応答23(本誌420号121頁)

甲から乙、乙から丙へと順次相続が行われている場合において、甲名義の不動産と乙名義の不動産について丙が相続登記を連件で申請するときに、甲名義の不動産についてする相続登記の登記申請書に添付した相続関係説明図を、乙名義の不動産についてする相続の登記の登記申請書に援用することはできない。

上記質疑応答の解説 登記研究728p72〜

(4)相続証明書に関すること
 相続の登記には、戸籍若しくは除籍の謄抄本、遺産分割協議書等の登記原因証明情報(旧法における相続を証する書面)のほか、相続関係説明図、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書等の添付が必要となる。そこで、これらの添付書面についても援用が認められるか否かが問題となる。
 相続財産に複数の不動産があり、各相続人がそれぞれの不動産を単独で相続する旨の遺産分割協議がされた場合において、登記実務においては、従来、添付書面の援用が認められないものとされていた(質疑応答22)。しかしながら、遺産分割協議書は、相続人全員によって作成されたものであることから、いずれの申請人もその遺産分割協議書の作成名義人の一人であること、及び戸籍等については、多くのしかも分量のある書面になることが多いことなどを考慮すると、各相続人への相続を原因とする所有権の移転の登記が同時に(連件で)申請されたときは、各申請の申請は異なるものの、いずれか一つの申請に、各相続人がそれぞれの不動産を単独で相続する旨の遺産分割協議書(登記原因証明情報の一部)を添付し、他の申請については、これを援用しても差し支えないものと考えられる(質疑応答26・質疑応答27)。
 また、一の申請書に添付した相続関係説明図により数個の申請の相続関係が明らかであるときは、その援用が認められる(質疑応答28)。ただし、遺産分割の協議によって申請目的の不動産を取得する者については「相」と、また、申請目的の不動産を取得しない者については「分割」と、それぞれ括弧書き又は◯で囲んで記載するのが、登記実務の取扱いである。したがって、同一の相続関係説明図を用いることは差し支えないが、例えば、A不動産を甲が、B不動産を乙が、C不動産を丙が、それぞれ遺産分割によって相続する場合、A不動産を目的とする登記申請書には甲「相」、乙及び丙を「分割」とする相続関係説明図を、B不動産を目的とする登記申請書には乙を「相」、甲及び丙を「分割」とする相続関係説明図を、C不動産を目的とする登記申請書には丙を「相」、甲及び乙を「分割」とする相続関係説明図を、それぞれ添付するのが相当である。
 なお、相続関係説明図には、当該相続に関するすべての者を記載すべきであり(本誌394号253頁)、相続を証する書面中、当該相続による登記をするについて必要な事項及び関係者等を、限定的に図によって明らかにしたものでなければならない。したがって、例えば、被相続人甲から乙が相続し、さらに乙から丙へと順次相続が行われている場合において、甲所有のA不動産の相続登記と、乙所有のB不動産の相続登記を連件で申請するときは、被相続人が異なる、すなわち相続関係説明図に記載すべき事項が異なることになることから、その援用は認められない(質疑応答23)。

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