用地交渉をしていると、稀にこんな冷や汗が出る場面に遭遇しませんか?
地主: 「私、市に土地を売った覚えなんてないわよ? 勝手に登記されたんじゃないの?」
担当: 「えっ、数年前に契約しましたよね? ほら、ここに控えが……(ガサゴソ)……あ、あれ!? 契約書の控えが見当たらない!!」
もし手元の契約書を紛失してしまった場合、もう事実を証明する手立てはないのでしょうか?
いいえ、諦めるのはまだ早いです。法務局(登記所)が、あなたの代わりに証拠を保管してくれている可能性が高いからです。
今回は、意外と知られていない「登記申請書類の保存期間」について解説します。
1. 救世主:「附属書類」の閲覧制度
登記が完了しているということは、過去に誰かが法務局へ「登記申請書」と、その証拠となる「添付書類(売買契約書や登記原因証明情報など)」を提出しているはずです。
実は、これらの書類は登記が終わってもすぐに捨てられるわけではありません。
利害関係人(当事者など)であれば、法務局に対して「請求書類の閲覧」を請求し、当時の書類を確認・コピー(※事件による)することが可能です。
これで、「売った・売らない」の水掛け論に終止符を打つことができます。
2. 現在のルール:保存期間は「30年」
では、いつまで遡れるのでしょうか?
現在の不動産登記規則では、以下のように定められています。
権利に関する登記の申請情報及びその添付情報
保存期間: 受付の日から30年間
(不動産登記規則 第28条第10号)
つまり、ここ30年以内に提出された書類であれば、法務局の倉庫(またはデータサーバー)に眠っている可能性が極めて高いのです。
3. 注意! 平成20年以前は期間が短かった
「なんだ、30年も残ってるなら安心だ」と思うのは早計です。
この「30年ルール」になったのは、平成20年(2008年)の法改正以降の話です。それ以前は、もっと期間が短かったのです。
【保存期間の変遷】
| 時期 | 表示の登記(地目変更など) | 権利の登記(売買など) |
| 平成20年7月22日 以降 (現在) | 30年 | 30年 |
| 平成20年7月21日 以前 (改正前) | 5年 | 10年 |
【ここが落とし穴】
もし調査したい案件が「平成15年の売買」だった場合、旧ルールの「10年保存」が適用され、すでに廃棄されている可能性が高いです(※経過措置等により残っている場合もありますが、期待薄です)。
「30年」が適用されるのは、あくまで比較的新しい登記に限られる点にご注意ください。
4. 資料:主な書類の保存期間リスト
不動産登記規則第28条には、書類ごとの保存期間が細かく定められています。
実務でよく使うもの(と、永久に残るもの)を抜粋して整理しました。
| 保存期間 | 対象となる書類・情報 |
| 永 久 | ● 登記記録(いわゆる登記簿の中身) ● 公図、地積測量図、建物図面 |
| 50年間 | ● 閉鎖された登記記録(土地) |
| 30年間 | ● 申請書・添付書類(売買契約書、原因証明情報など) ● 閉鎖された登記記録(建物) |
| 10年間 | ● 受付帳(何月何日に誰が申請したかのリスト) |
※「図面(公図や測量図)」は永久保存ですが、「契約書関係」は30年で廃棄される、という違いがポイントです。
まとめ:最後の砦として知っておこう
- 手元の契約書をなくしても、法務局に「原本(の画像等)」があるかもしれない。
- 現在の保存期間は「受付から30年」。
- ただし、平成20年以前の古い事件は「10年」で廃棄されているかも。
もちろん、自庁で契約書をしっかり管理するのが一番ですが、万が一のトラブルの際には「法務局への閲覧請求」という手段があることを思い出してください。それが組織を救う一手になるかもしれません。
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