1. 事件発生:この2人、同一人物ですか?
ある日、2筆の土地の登記情報を見ていて、不思議なことに気づきました。
以下の画像をご覧ください。

- 土地①(南都町1丁目101):
- 所有者:法務 五郎
- 住所:くまのみ市一丁目1番20号
- 受付:平成9年9月20日 第637号
- 土地②(南都町1丁目101-2):
- 所有者:法務 五郎
- 住所:くまのみ市一丁目1番1号
- 受付:平成9年9月20日 第637号
お気づきでしょうか?
「所有権移転」の受付年月日と受付番号が全く同じ(同時申請)であるにもかかわらず、土地②の所有者の「住所」が異なっているのです。
通常、同じタイミングで相続登記をしたのであれば、住所も同じはず。
これは同姓同名の別人なのでしょうか? それとも単なる登記ミスでしょうか?
2. 推理:カギは「コンピュータ化(改製)」にあり
結論から言うと、この2人の「法務五郎」は同一人物です。
なぜ住所が食い違ってしまったのか。その犯人は「登記簿のコンピュータ化(改製)」という歴史的な作業の仕組みにあります。
移記(いき)のルール
紙の登記簿からコンピュータ(磁気ディスク)へデータを移行することを「改製」といいますが、このとき、すべての情報が書き写されたわけではありません。
ルール:
改製時点において「現に効力を有する事項」のみを移記する。
(不動産登記規則 附則第3条第2項)
つまり、過去に抹消された事項や、変更前の古い情報は、新しい登記記録には載らないのです。
3. 真相:空白のタイムラインを埋める
この2つの土地には、以下のような歴史があったと推測されます。
- 相続登記(平成9年):法務五郎さんは、両方の土地を相続しました。この時の住所は「1番20号」でした。
- 住所移転と名変登記(平成XX年):五郎さんは「1番1号」へ引っ越しました。この時、何らかの理由(売却予定など)で、「101-2」の土地だけ住所変更登記(名変)を行いました。(「101」の土地は住所変更登記を忘れたか、しませんでした。)
- コンピュータ化(改製):その後、法務局で登記のコンピュータ化が行われました。
その結果どうなった?
- 101番の土地:名変をしていないため、改製時点での住所である「1番20号」がそのまま移記されました。
- 101-2番の土地:名変済みだったため、改製時点での現在の住所である「1番1号」が移記されました。※ここがポイントですが、「住所変更登記をした」という経緯(変更の履歴)は「現に効力を有しない」ため移記されず、消えてしまったのです。
その結果、現在の全部事項証明書だけを見比べると、まるで最初から別々の住所で登記されたかのような「ねじれ現象」が完成してしまったのです。
4. 解決策:何を確認すればよい?
このような事例に遭遇した場合、現在の証明書だけを見ていてもラチが明きません。
必ず「閉鎖登記簿(閉鎖謄本)」を取得してください。
コンピュータ化される前の「紙の登記簿(の写し)」を見れば、そこにはハッキリと以下の記載が残っているはずです。
- 101-2の土地の甲区:「〇年〇月〇日 住所移転 1番1号」
これで、20号から1号へ移転した経緯が繋がり、同一人物であることが証明できます。
【根拠法令】
不動産登記規則 附則第3条(旧登記簿の改製)
2 前項の規定による登記簿の改製は、登記用紙にされている登記を登記記録に移記してするものとする。この場合には、土地登記簿の表題部の登記用紙にされている地番、地目及び地積に係る登記を除き、現に効力を有しない登記を移記することを要しない。
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