相続登記を行う実務家の皆さん、「相続関係説明図」はどのように作成されていますか?
「とりあえず、いつものテンプレートに名前を入れて終わり」という方も多いのではないでしょうか。
実はこの相続関係説明図、なんとなく作っている方が多いものの、その根拠となる「昭和39年通達(民事甲第3749号)」には、かなり明確な「お作法(ルール)」が定められています。
今回は、意外と読まれていないこの通達を紐解き、「本来あるべき相続関係説明図の姿」と、実務で迷いがちな「どこまで書くべきか?」というポイントを解説します。
一度基本に立ち返ることで、より正確でプロフェッショナルな書類作成を目指しましょう。
1. 通達が求めている「必須事項」とは?
相続関係説明図(相関図)の本来の役割は、大量の戸籍謄本等の代わりに提出することで、戸籍原本の還付(返却)を受けるための便宜的な書類です。
そのため、登記官が一目で相続関係を把握できるよう、以下の事項を記載することが求められています。
① 被相続人(亡くなった方)
- 氏名: 氏名の前に「(被)」と付け、被相続人であることを明示します。
- 最後の住所: 住民票の除票上の住所を記載します。もし登記簿上の住所と異なる場合は、両方(登記上の住所・最後の住所)を併記します。
- 死亡の記載: 相続開始の時期(死亡日)および事由(死亡)を記載します。
② 中間の相続人・被代襲者(先に亡くなった子など)
- 氏名と死亡日: 氏名に加え、死亡日等の事由を記載します。
- 相続権を失った場合: もし欠格事由や廃除によって相続権がない場合は、その旨(「欠格」「廃除」)を明記します。
③ 相続放棄をした人
- 氏名の横に「放棄」と記載します。
④ 特別受益者・遺産分割で取得しない人
- 特別受益者には「特別受益者」、遺産分割協議の結果、不動産を取得しないことになった人には「分割」と記載します。
⑤ 不動産を取得する相続人
- 氏名: 氏名の前に「(相)」と付け、権利取得者であることを明示します。
- 住所・生年月日: この人については、住所だけでなく「生年月日」も記載します。
2. 必須事項「以外」は書くべき?
通達で求められているのは上記の内容ですが、実務ではそれ以外の情報(本籍など)を書くべきか悩むことがあります。
結論としては、「作成者の判断(裁量)で記載してOK」です。
よくある追加記載
- (イ)被相続人・相続人の「本籍」
- (ロ)不動産を取得「しない」人の「住所」
これらは必須ではありませんが、実務書によっては記載を推奨しているものもあります。
参考:『全訂第2版 相続における戸籍の見方と登記手続』(髙妻新・荒木文明 著)
「通達等は最小限のものを示していると理解し、相続証明書の内容をできるだけ表示することが、迅速で適切な処理に役立つ」
(※同書では本籍なども詳しく記載するスタイルを採用しています)
記載した場合の添付書類はどうなる?
- 本籍を書いた場合:当然、その内容を裏付ける「戸籍謄本」を添付しますので、特別な追加書類は不要です。
- 取得「しない」人の住所を書いた場合:ここが悩みどころです。「住所を書いたからには、その裏付けとして住民票や戸籍の附票もつけるべきか?」という疑問が生じます。実務上は、印鑑証明書(遺産分割協議書に添付)で確認できるため不要とする考え方もあれば、念のため添付するという考え方もあります。ここについては明確な通達がないため、各自の判断になります。
3. 法務局HPの記載例
法務局のホームページに掲載されている記載例を見てみましょう。
(事例:法務太郎が死亡し、法務一郎が相続、法務花子と法務温子は分割により取得せず)

この記載例は、見事に昭和39年通達の「必須事項」のみで構成されています。
- 本籍: 一切記載なし。
- 取得しない人(花子・温子): 「分割」の記載のみで、住所も生年月日も記載なし。
つまり、法務局が公式に示している例としても、「取得しない人の住所や、全員の本籍までは必須ではない」ということが読み取れます。
まとめ:通達を理解した上で、自分なりのスタイルを
相続関係説明図は、ただの家系図ではありません。「戸籍の束」と「登記嘱託書」をつなぐ重要な架け橋です。
- 基本(必須): 昭和39年通達の要件((被)(相)の区別、死亡日、分割・放棄の別など)は必ず守る。
- 応用(任意): 本籍や取得しない人の住所などは、案件の複雑さや自身のスタンスに合わせて記載する。
「なんとなく」で作るのをやめて、「通達ではこうだから、最低限ここは押さえる」「審査をスムーズにするために、あえて本籍も書く」といった、意図のある作成を心がけてみてはいかがでしょうか。
【参考資料】根拠となる通達
昭和39年11月21日民事甲第3749号民事局通達
相続を証する書面の原本還付について
[要旨]
相続関係登記事件に添付した相続関係を証する書面(戸籍又は除籍の謄本等)の原本還付を当該書面の謄本を添付せずして請求する手続。[本文]
相続による権利移転の登記及び相続人よりするその他の登記の申請書に添付された不動産登記法第41条もしくは第42条の規定による書面(戸(除)籍の謄(抄)本、特別受益の証明書、遺産分割の協議書(遺産分割の審判書(又は調停調書)を含む。)等)の原本還付を請求する場合において、その謄本に代え、別紙の振り合いで作成された「相続関係説明図」を提出した場合には、便宜原本還付の取扱をしてさしつかえないものと考えるので、この旨貴下登記官に周知してしかるべく取り計られたい。[解説]
登記申請書に添付して提出した申請書の付属書類について、その原本の還付を受けるには、当該書類の原本とともに、その書類を謄写し、その末尾に相違ない旨を申請人において奥書記名、押印した謄本を添付して請求すべき(不動産登記法施行細則第44条の11第1項)ものとされていることは周知のとおりである。
ところで、相続による権利移転の登記及び相続人により申請するその他の登記事件についての申請書に添付する相続又は相続人の身分を証する書面(戸籍又は除籍の謄(抄)本)、特別受益者の証明書、遺産分割の協議書(審判書又は調停調書を含む。)等)について、申請(嘱託)人が右の書面の原本を他日他の登記所に再使用する等の目的でその還付の請求をしようとする場合には、右の書類の全部についての謄本の作成を要するのであるが、相続関係は複雑であって、その相続又は身分を証する書面は多岐にわたりその数も多量となるのが通常であり、申請人の謄本作成に要する手続並びに経費の負担も尠くないし、他方、登記所においても、右謄本を原本と対照してしなければならない調査確認等に要する手数が相当の負担となり軽視できないので、かねてより申請人の負担の軽減と併せて登記事務の能率的処理を図るため、該手続の簡易化について各法務局の意見も徴し慎重に検討されていたのである。
今般、右手続の簡易化についての成案が得られ、右の謄本に代えて「相続関係説明図」(通達「別紙」参照)を提出した場合には、便宜、原本還付の取扱をしてさしつかえない旨通達されたのである。
なお、この取扱のなされることによる実益は非常に大きいものであると考えられる。
「相続関係説明図」の様式等は通達の別紙に示されたところにより作成することを要するのであるが、その記載は、被相続人については、最後の住所(登記簿上の住所と最後の住所が同一でないときは、それらを併記する。)相続開始の時期(死亡又は死亡したと見做された日)及び事由を記載し、氏名に(被)と冠記して被相続人であることを明らかにし、中間の相続人(例えば、通達「別紙」に例示の乙某)及び代襲相続の場合における被代襲者については、その氏名を記載した傍らに相続開始の時期(死亡又は死亡したと見做された日)及び事由又は相続権を失った者である旨を記載する(例えば、相続人の欠格事由該当者については、「欠格」と、推定相続人の廃除をされた者については、「廃除」と記載する。)等の振り合で作成されるのが適当であるとされたものである。
なお、推定相続人中相続の放棄をした者がある場合には、その旨の氏名を記載した傍らにその旨を記載し(例えば、「放棄」と記載し)、共同相続人中特別受益者及び遺産分割により当該登記の申請物件に関する権利を取得しない者については、その旨を氏名を記載した傍らに例えば「特別受益者」又は「分割」と記載するものとされ、当該登記の申請物件に関する権利を取得した者については、その氏名の記載の傍らに住所及び生年月日を記載し、その氏名に(相)と冠記して、申請物件に関する権利の取得者である旨を明らかにする趣旨で示されたものである。
次に、相続又は身分を証する書面が登記申請の代理権限を証する書面をも兼ねている場合(例えば、未成年の相続人に代わって法定代理人(親権者又は後見人)が登記を申請する場合において相続を証する書面たる戸籍の謄本でその法定代理権限をも証する場合等)に、当該書面を還付できるか否かについてはこの通達には触れていないので、この場合、当該書面は還付できないものと解されよう。昭和40年8月3日民事甲第1956号民事局長通達
相続及び住所を証する書面の原本還付について
[要旨]
相続に関する所有権移転登記の申請書に添付された「相続関係説明図」に登記権利者の住所として、不動産登記法施行細則第41条に規定された住所証明書の住所が明確に記載されている場合は、相続及び住所を証する書面は、便宜原本還付して差し支えない。[照会]
相続による所有権移転の登記に添付された、不動産登記法第41条の規定による書面等の原本還付の取り扱いについては、昭和39年11月21日付民事甲第3479号の貴職の通達によって取り扱っていますが添付の「相続関係説明図」に、登記権利者の住所を明らかに記載することによって、不動産登記法施行細則第41条の書面も、便宜原本還付の取り扱いをしてもさしつかえないように考えられますがこの取り扱いが認められないものか、お伺いします。
なお、右の取り扱いが認められるならば、同細則第44条の11第2項の記載は「相続及び住所を証する書面は還付した。㊞」と、記載すべきであると考えますがあわせてご指示をお願いいたします。[回答]
昭和40年6月25日付登第304号をもって問合せのあった標記の件については、不動産登記法施行細則第41条の規定により添付すべき書面における住所が、「相続関係説明図」に明確に記載されている場合には、前段、後段とも便宜意見のとおり取り扱ってさしつかえない。[解説]
申請書に添付すべき不動産登記法施行細則第41条の規定による住所証明書の原本還付を請求するには、原本と相違ない無塩を記載した謄本を申請書に添付する必要があることはいうまでもない(同細則第44条の11第1項)。また、「相続関係説明図」の提出による相続関係の添付書類の原本還付を認めた趣旨は、相続人の身分を証する書面は、内容が複雑で部数も多数となり、これらの書面の原本還付を求めるために謄本を作成することは、申請人にとって大きな負担となるのでこれを軽減するとともに、登記官の調査事務の能率化のためにも有意義と考えられたのである。そして、「相続関係説明図」に登記権利者たる相続人の氏名、生年月日のほかに住所の記載をもされているのは、登記権利者の特定せしめるためであった、住所が記載されていても住所証明書の原本還付までも認める趣旨ではないのである。
しかして、この「相続関係説明図」に関する通達(昭和39、11、21民事甲第3749号)によっては、住所証明書の謄本を作成することなくしてその原本還付を認めることはできないのである。
ところで、所有権移転登記等に登記権利者の住所証明書が、必要とされるのは、登記権利者の真正を担保し、架空人名義に所有権の登記がなされるのを防止するのにある。したがって、「相続関係説明図」に登記権利者(相続人)の住所として細則第41条の規定による住所証明書の住所が明確に記載されており、これを登記官が照合して確認すれば、右の趣旨を逸脱することにはならないといえる。それで「相続関係説明図」を認めた趣旨からも相続に関する登記に限り、住所証明書もとくに謄本を作成することなく、原本還付をしてさしつかえないと解されるのである。これによって相続に関する登記について「相続関係説明図」と共にその簡素化と能率化を期することができると思われる。
つぎに、登記官が、申請書の添付書類の原本還付するときは、その謄本が原本と相違ないことを確認してから、その謄本に原本還付した旨を記載して捺印することになっている(細則第44条の11第2項。)それで本件の場合は、住所証明書の謄本はないのであるから、「相続関係説明図」の左下部に「相続及び住所を証する書面は還付した」。と記載し、登記官が押印すべきこととしたものである。
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