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【相続登記】「最後の住所」と「登記簿の住所」が違う! 名変登記は必要? 同一性証明の完全ガイド

被相続人(亡くなった方)の登記記録を見て、「あれ? 住所が今の住所(死亡時の住所)と違う!」と焦ったことはありませんか?

「この場合、相続登記の前に、被相続人の住所変更登記(いわゆる名変登記)をしなければならないのでしょうか?」

相続登記の実務で必ずぶつかるこの疑問について、原則から例外、そして万が一書類がない場合の救済策まで、この1本にまとめました。

目次

1. 原則:被相続人の「名変登記」は省略できます

通常、不動産の所有者の住所が変わった場合、売買や贈与の登記をする前提として、必ず「登記名義人の氏名・住所変更登記(名変登記)」が必要です。

しかし、相続登記の場合は、この名変登記を省略することができます。

なぜ省略できるのか?

戸籍謄本(本籍・氏名)と登記記録(住所・氏名)をつなぐ書類を提出し、「登記簿上の所有者」と「亡くなった被相続人」が同一人物であることを証明できれば、直ちに相続登記(所有権移転)ができる取り扱いになっているからです。

条文上の明確な根拠はありませんが、明治時代の回答(明治33年4月28日民刑414)などを背景に、当然の運用として行われています。

登記研究133号
被相続人が婚姻等により「氏」変更後その登記未了の間に死亡した場合は、その変更を証する書面を添付して直接相続登記を申請することができる。

2. 何を添付すればいい?(同一性を証する書面)

同一人物であることを証明するために、通常は以下のいずれかを添付します。

  • 住民票の除票(本籍及び登記記録上の住所が記載されているもの)
  • 戸籍の附票(登記記録上の住所が記載されているもの)

これらによって、「登記簿上の住所」から「死亡時の住所」までのつながりを証明します。

【重要】保存期間が延長されました

かつて住民票の除票等は保存期間が5年しかなく、「すぐに廃棄されて取れない!」という問題が多発していました。

しかし、法改正(令和元年6月20日施行)により、保存期間は150年間に延長されました。

注意: 平成26年(2014年)6月19日以前に消除または改製されたものについては、すでに廃棄されている可能性が高いので、各自治体への確認が必要です。

3. 添付しなくていいケース(登記住所=本籍)

「住民票の除票などは、必ず添付しなければならないのでしょうか?」

答えはNOです。添付不要なケースがあります。

「登記上の住所」=「本籍」の場合

被相続人の「登記簿上の住所」が、戸籍謄本に記載されている「本籍」と全く同じである場合、同一性を証する書面の添付は不要です。

理由: 昭和27年の住民登録制度新設以前は、本籍地で登記されることがほとんどでした。そのため、登記住所と本籍が一致していれば、戸籍謄本(本籍記載)のみで同一性が確認できるとされています。

法務局HPにある「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先」住民票の除票又は戸籍の附票の備考欄をみると、「※「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本」等に記載された本籍と異なる場合に必要となります。」と書かれています。

実務上のポイント

住民票の除票が廃棄されていて取得できない場合でも、焦らずに「登記住所と本籍が一致していないか?」を確認しましょう。一致していれば、除票がなくても登記は通ります。

(※もちろん、除票が取得できるなら、念のため添付したほうが審査はスムーズです。

4. 書類が繋がらない場合の救済策(権利証など)

最も悩ましいのが、以下のケースです。

  • 「登記上の住所」≠「本籍」である。
  • 引っ越しを繰り返しており、保存期間経過により「住民票の除票」等が廃棄されてしまった。

住所の履歴がつながらない場合、どうすればよいのでしょうか。

「登記済証(権利証)」が最強の切り札

平成29年の通達により、同一性を証する情報として「所有権に関する被相続人名義の登記済証(権利証)」を提供すれば、不在籍証明書などの他の添付情報を求めることなく、同一性を確認できるとされました。

つまり、除票が取れなくても、「亡くなった方が大事に持っていた権利証」を提出できれば、それが「本人であることの証明」になり、登記が可能になります。

その他の証明手段

権利証も見当たらない場合は、以下のような書類を組み合わせて証明を試みます。

  • 不在籍証明書・不在住証明書(登記上の住所に、同姓同名の別人がいないことの証明)
  • 固定資産評価証明書・納税通知書(所有者として納税していたことの証明)
  • 上申書(相続人全員による実印での申し立て)

まとめ

被相続人の住所と登記簿の住所が違う場合、以下のフローチャートで考えましょう。

  1. 「登記上の住所」と「本籍」は同じ?
    • YES → そのまま登記可能(戸籍のみでOK)。
    • NO → 次へ。
  2. 「住民票の除票」や「戸籍の附票」で住所がつながる?
    • YES → それを添付して登記可能。
    • NO(廃棄済み) → 次へ。
  3. 被相続人の「権利証(登記済証)」はある?
    • YES → 権利証を添付して登記可能(平成29年通達)。
    • NO → 不在籍・不在住証明書、納税証明書、上申書等で対応。

住所の証明は相続登記の入り口ですが、奥が深い論点です。

「書類がない!」と諦める前に、本籍との一致や、権利証の有無を必ずチェックしてみてください。

「平成29年3月23日法務省民二第174号通達」

【別紙甲号】
不登第 51 号
平成 29 年 3 ⽉ 7 ⽇

法務省⺠事局⺠事第⼆課⻑ 殿

福岡法務局⺠事⾏政部⻑

被相続⼈の同⼀性を証する情報として住⺠票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(照会)

相続による所有権の移転の登記(以下「相続登記」という。)の申請において、所有権の登記名義⼈である被相続⼈の登記記録上の住所が⼾籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には、相続を証する市区町村⻑が職務上作成した情報(不動産登記令(平成 16 年 政令第 379号)別表の 22 の項添付情報欄)の⼀部として、被相続⼈の同⼀性を証する情報の提出が必要であるところ、当該情報として、住⺠票の写し(住⺠基本台帳法(昭 和 42 年法律第 81 号)第 7 条第 5 号、第 12 条。ただし、本籍及び登記記録上の住所が 記載されているものに限る。)、⼾籍の附票の写し(同法第 17 条、第 20 条。ただし、 登記記録上の住所が記載されているものに限る。)⼜は所有権に関する被相続⼈名義の登記済証(改正前の不動産登記法(明治 32 年法律第 24 号)第 60 条第 1 項)の提供があれば、不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続⼈の同⼀性を確認することができ、当該申請に係る登記をすることができると考えますが、いささか疑義がありますので照会します。

【⼄号】
法務省⺠⼆第 174 号
平成 29 年 3 ⽉ 23 ⽇

福岡法務局⺠事⾏政部⻑ 殿

法務省⺠事局⺠事第⼆課⻑
(公印省略)

被相続⼈の同⼀性を証する情報として住⺠票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(回答)

本⽉ 7 ⽇付け不登第 51 号をもって照会のありました標記の件については、貴⾒のとおり取り扱われて差し⽀えありません。

登記研究748p53

被相続人の同一性を確認するためには、被相続人の氏名はもちろんこと、その住所についても、登記記録上の住所と同一であるか否かについて審査する必要がある。そして、前号において説明したとおり、昭和27年7月1日に住民登録制度が新設され、すべての住民の住所が登録されることに以前においては、登記名義人の住所が本籍地をもって登記されている場合がほとんどであった実情(本誌747号3頁)にかんがみ、登記実務においては、被相続人の登記記録上の住所と相続を証する情報として提供された戸籍の本籍地とが同一であることにより、被相続人の同一性が確認できる場合には、被相続人の最後の住所を証する情報を提供することは要しないとされている(質疑応答3)。

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