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【連載 第1回】共有私道の舗装、「全員のハンコ」はもう不要?改正民法の「軽微変更」を徹底解説~用地担当者が知っておくべき「民法改正」の勝ちパターン(基礎編)~

目次

はじめに:現場でよくある「あの悩み」

自治体の用地課や管財課に配属されたばかりの皆さん、現場でこんな場面に遭遇して頭を抱えたことはありませんか?

「地域の生活道路(私道)が砂利道でボロボロだから、市で舗装してほしいと要望が来た。

でも、登記簿を見たら共有者が10人以上いて、数人と連絡がつかない……。

全員のハンコなんて集められないから、工事は無理だと断るしかないのか?」

これまで、共有物の変更(形状を変える行為)には「共有者全員の同意」が必要とされ、たった一人の反対や不在で事業が頓挫することがありました。

しかし、令和5年4月1日施行の改正民法により、このルールが大きく変わっています。

全2回の連載で、この「共有私道トラブル」を解決するための法的知識を解説します。

第1回の今日は、実務で強力な武器となる「軽微変更(形状又は効用の著しい変更を伴わない変更)」についてです。

1. 結論:全員の同意は「不要」な場合がある

先に結論を申し上げます。

砂利道のアスファルト舗装など「軽微な変更」については、共有者全員の同意は不要です。

「持分の価格の過半数」の同意があれば実施可能です。

これを知っているだけで、諦めていた工事や管理行為を進められる可能性がグッと高まります。

2. 解説と根拠:なぜ「過半数」でOKになったのか?

① 改正前の「壁」

これまで(旧民法)、共有物に対する行為は以下の区分けしかなく、解釈が曖昧でした。

  • 変更行為(物理的変化):全員の同意が必要(旧民法251条)。
  • 管理行為(利用・改良):持分の過半数で決定(旧民法252条)。

「砂利道をアスファルトにする」行為は、物理的な変化を伴うため「変更行為」とみなされ、実務上はリスク回避のために「全員同意」を求めるのが通例でした。これが事業の大きな足かせとなっていたのです。

② 新ルール「軽微変更」の登場

改正民法では、「変更」の中に新たなカテゴリが作られました。

【民法 第251条 第1項(要約)】

共有物の変更には全員の同意が必要である。ただし、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)」はこの限りではない。

【民法 第252条 第1項(要約)】

共有物の管理に関する事項(軽微変更を含む)は、各共有者の持分の価格の過半数で決する。

つまり、「著しい変更」でなければ、それは「管理行為」の一種として扱い、過半数で決めて良いと法律で明記されたのです。

③ 具体的に何が「軽微変更」なのか?

用地担当者が一番知りたいのはここでしょう。法制審議会の議論では、以下のような具体例が挙げられています。

工事の種類判定必要な同意
砂利道のアスファルト舗装軽微変更持分の過半数
建物の外壁・屋上の防水工事軽微変更持分の過半数
建物の大規模な増改築重大な変更全員の同意
共有地の造成(宅地化など)重大な変更全員の同意

(出典:法務省ウェブサイト([https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf])をもとに作成 )

※ 「持分の価格の過半数」とは、人数(頭数)ではなく、持分割合の合計が50%を超えることです。

3. 実務での活用フロー:地権者への説明

この知識を、実際の用地交渉や住民対応でどう使うかシミュレーションしてみましょう。

シチュエーション

私道(共有者A、B、C、Dの4名。持分は各1/4)の舗装要望。Dが行方不明。

【NG対応】

「Dさんと連絡がつかないと、全員のハンコが揃わないので工事はできません。皆さんでDさんを探してください。」

→ 住民の不満爆発、塩漬け案件へ。

【OK対応(改正法活用)】

「民法が改正され、大規模な工事でなければ、持分の過半数の方の賛成で工事ができるようになりました。今回は舗装工事ですので、Aさん、Bさん、Cさんの3名(持分合計3/4)の同意をいただければ、市として工事を進められます(Dさんの同意は不要です)。」

→ 住民の負担減、事業進捗。

4. 注意点:陥りやすいミス

  1. 「用地買収(所有権移転)」は別物!
    「軽微変更」で過半数決議ができるのは、あくまで工事や管理の話です。自治体がその土地を買い取る(所有権移転登記を行う)場合は「処分行為」にあたるため、依然として「全員の同意」が必要です。
  2. 「過半数」の数え間違い
    「過半数」は50%超です。ちょうど50%(1/2)では足りません。持分1/2の共有者Aと、1/2の共有者Bがいる場合、Aだけの賛成では工事できません。

第1回まとめと次回予告

今回は「共有者全員の同意がなくても、過半数があれば工事できる」という基本ルールを解説しました。

しかし、現場ではもっと厳しいケースがありますよね?

「反対する人がいて過半数に届かない」

「無視する人が多すぎて、賛成者が過半数にならない」

諦めるのはまだ早いです。実は、改正民法には「返事をしない人を計算に入れない」という強力な奥の手が存在します。

次回、第2回はその「応用編」を解説します。

👉 次回:【連載 第2回】「あの人、返事がないから…」を解決する!賛否不明者の除外手続き

参考資料:法制審議会での議論

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00001.html
部会資料17 中間試案のたたき台(共有制度の見直し(1))【PDF】13頁

1 裁判所による必要な処分
現行法では,共有物の管理(利用)に関し共有者間に意見の対立があり,共有物を管
理(利用)することに支障がある場合には,共有物分割による共有関係を解消すること
で対応することとなる。しかし,共有関係にあるケースであっても,実際には,共有物
分割によって対応することが困難なこともある。例えば,私道の沿道の宅地の所有者ら
が私道を通路として利用する権利を確保するために,その宅地の所有者らがその私道を
共有しているケースでは,実際上,その共有関係を共有物分割で解消することは困難で
あると考えられる(共有物の分割請求が権利濫用に当たると判断されることも多いと思
われる。)。
このようなケースでは,共有物の管理(利用)につき意見が対立したとしても,共有
関係を維持せざるを得ず,また,共有者の多数が共有物の変更を伴う共用物の改良を望
んでも,その改良をすることができないといった事態が生じ得る。 例えば,前記の私道
のケースにおいて,その私道が未舗装であり,共有者の多数がアスファルト等で鋪装を
したいが,少数の共有者が鋪装に反対している場合などが考えられる。
このようなケースにおいては,反対をしている共有者にかける負担が大きなものでな
いのであれば,一部に反対があっても,共有物の変更を伴う改良を認めるべきであると
の指摘が考えられる。

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