日々の業務お疲れ様です。
登記簿の見方や地権者調査など、覚えることが多くて大変かと思います。さらに「法改正」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。
しかし、「令和3年改正不動産登記法」は、私たち用地担当者にとって「地権者を説得し、業務をスムーズに進めるための強力な武器」となります。
今回は、実務で明日から使える5つのポイントに絞って概要を解説します。
結論:改正法がもたらす実務上のメリット
一言で申し上げれば、「登記は国民の義務」となりました。
これにより、地権者に対して「登記を放置することによる具体的な不利益(罰則等)」を根拠として提示できるようになり、早期の登記協力を促す正当な理由が得られたことが最大のポイントです。
解説と根拠:実務に直結する5つの重要ポイント
1. 相続・住所変更登記の義務化
結論:登記の放置は「過料(ペナルティ)」の対象となります。
- 相続登記(不動産登記法 第76条の2):相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
- 住所・氏名変更登記(不動産登記法 第76条の5):住所等が変わった日から2年以内に申請が必要です。こちらは5万円以下の過料の対象となります(2026年4月までに施行予定)。
🔰実務でのポイント
これまでは「登記は個人の自由」という説明が一般的でしたが、これからは「放置すると将来的に過料の対象になるリスクがある」という明確なルールを伝えられます。用地交渉において、「市の事業に合わせて今手続きをしておくことが、地権者様ご自身の利益(不利益の回避)に繋がります」と説得する際の強力な根拠になります。

2. 相続人申告登記の新設
結論:ペナルティ回避の「応急処置」にはなりますが、そのままでは「用地買収」はできません。
- 不動産登記法 第76条の3(要約):遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続人が法務局に対して「私が相続人である」と申し出れば、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされる制度です。
🔰実務でのポイント
ここが最も勘違いしやすい点です。申告登記はあくまで「義務を履行した」という報告に過ぎず、所有権の所在を確定させるものではありません。
この状態では、市が所有権移転登記(買収)を行うことは不可能です。「申告したから売れる」と誤解している地権者には、「契約の前には、皆様で正式な相続登記(遺産分割協議等)を行っていただく必要があります」と、正確に案内してください。

3. 所有権の登記事項の追加(外国人・法人対応)
結論:将来の「所有者不明土地」を未然に防ぐための、未来へのバトンです。
- 不動産登記法 第27条等(要約):海外居住者の「国内連絡先」や、法人の「会社法人等番号」が新たに登記事項に加わりました。
🔰実務でのポイント
私たちが嘱託登記をする際、これらの情報を正確に登記簿へ載せておくことで、30年後、50年後の後輩たちが「地権者の居場所がわからない」と頭を抱えるリスクをゼロにできます。「未来の担当者が困らないように、今の代で情報を整える」という気概を持って取り組むべき、重要な実務です。
4. プライバシー保護のための代替措置
結論:登記簿に「本当の住所」が載らないケースがあります。慎重なアプローチが必要です。
- 不動産登記法 第34条の2(要約):DV被害者やストーカー被害者などが申出を行うことで、登記簿上の住所を「法務局」や「委任弁護士の事務所」などの住所(公示用住所)に置き換えることができる制度です。
🔰実務でのポイント
自治体職員は住基ネット等で「真の住所」を把握できる立場にありますが、登記簿でこの措置が取られている場合、地権者は「居場所を知られたくない」という強い意志を持っています。
不用意に自宅へ訪問したり、普通郵便で書類を送付したりすることは避け、代理人を通じるなど、相手の事情を察したデリケートな対応が求められます。
5. 行政機関等との情報連携
結論:法務局が職権で住所変更等を行えるようになり、調査の負担軽減が期待されます。
- 不動産登記法 第151条等(要約):法務局が住基ネット等の公的機関から死亡や住所変更の情報を取得し、登記官の職権で登記内容を更新できる仕組みが整備されます(2026年4月以降、順次稼働予定)。
🔰実務でのポイント
今後は、用地調査の段階で「登記簿の住所が古いまま」というケースが徐々に減っていくはずです。行政間の連携により、私たちの「住所追い」の苦労が少しずつ解消されることが期待されます。
まとめ:改正法を「用地買収の武器」にする
今回の改正法は、すべて「所有者不明土地をなくす・防ぐ」というミッションを後押しするためのルールです。
- 義務化の根拠で、地権者の背中を押す。
- 申告登記の案内で、地権者をペナルティから守る。
- プライバシー配慮で、地権者との信頼関係を築く。
これらを使い分けることで、難航しがちな用地交渉の突破口が見えてきます。法改正を味方につけて、自信を持って業務に邁進してください。
コメント