法律の勉強を始めると、最初にぶつかる壁の一つが「実体法(じったいほう)」と「手続法(てつづきほう)」という言葉です。
漢字を見るとなんとなく意味はわかりますが、「具体的にどう違うの?」と聞かれると説明に困りますよね。
今回は、この2つの違いを、難しい法律用語をなるべく使わずに、料理やスポーツに例えて解説します。
はじめに:法律は「中身」と「手段」でできている
法律には無数の種類がありますが、役割ごとに大きく2つのグループに分けることができます。それが「実体法」と「手続法」です。
一言で言うと、こうなります。
- 実体法 = 「中身」(権利や義務、ルールの正体)
- 手続法 = 「手段」(その中身を実現するための手順)
これだけではピンとこないと思いますので、詳しく見ていきましょう。
1. 実体法(じったいほう)とは?
「あなたには、どんな権利があるか?」を決める法律
実体法は、権利や義務の発生、変更、消滅の条件を定めたものです。
「何をしたら犯罪になるのか?」「借金はどういう契約で成立するのか?」といった、法律関係の「中身」そのものを定めています。
- 代表的な法律: 民法、刑法、商法
- イメージ: スポーツの「ルールブック」(ホームランとは何か、ファウルとは何か)
例(民法):
「AさんがBさんにお金を貸したら、AさんはBさんに『返せ』と言う権利(債権)を持つ」
→ これが実体法です。
2. 手続法(てつづきほう)とは?
「その権利を、どうやって実現するか?」を決める法律
実体法で決まった権利も、相手が守ってくれなければ絵に描いた餅です。
手続法は、その権利を実現したり、守らせたりするための「手順」や「方法」を定めています。
- 代表的な法律: 民事訴訟法、刑事訴訟法、不動産登記法
- イメージ: スポーツの「試合進行マニュアル」(審判への抗議の仕方、大会の運営方法)
例(民事訴訟法):
「Bさんがお金を返さない時、Aさんはどのような書類を裁判所に出し、どのような手順で裁判を行い、どうやってBさんの財産を差し押さえるか」
→ これが手続法です。
3. 分かりやすい例え話
もっとイメージしやすくするために、「料理」と「不動産」で例えてみましょう。
例え①:料理コンテスト
- 実体法 = 「レシピ」
- 「砂糖を入れると甘くなる」「小麦粉を焼くとパンになる」という、素材の化学変化やルールそのもの。
- 手続法 = 「調理器具と手順」
- 「ボウルで混ぜる」「オーブンを180度に予熱する」という、レシピ(中身)を現実の料理(結果)にするためのプロセス。
例え②:不動産を買ったとき
これまで勉強してきた「登記」の話に当てはめると、一番スッキリします。
| ステップ | 状況 | 担当する法律 | 分類 |
| 1 | AさんがBさんから土地を買った。 Aさんに「所有権」が移転した。 | 民法 | 実体法 |
| 2 | Aさんが自分の土地だと証明したい。 法務局に「申請書」を出す。 | 不動産登記法 | 手続法 |
- 民法(実体法): 「売買契約によって、所有権がAさんに移転する」と定めている。
- 不動産登記法(手続法): 「その所有権を登記簿に載せるには、こういう様式の申請書を出してください」と定めている。
4. 両者の関係性:「車の両輪」
この2つは、どちらか片方だけでは機能しません。
- 実体法だけあっても…「お金を返してもらう権利がある!」と言えても、相手が無視したら回収する手段(裁判や差押えの手順)がわかりません。
- 手続法だけあっても…裁判のやり方はわかっても、そもそも「何を根拠に訴えるのか(権利の中身)」がなければ裁判になりません。
法学者の間では、よく「実体法は手続法の母」や「手続法は実体法の侍女(召使い)」などと言われますが、現代では「車の両輪」と考えるのが一番です。
まとめ
| 実体法 | 手続法 | |
| 役割 | 「中身」を決める | 「手段」を決める |
| 問い | What(何が権利か?) | How(どうやって実現するか?) |
| 代表例 | 民法、刑法 | 不動産登記法、民事訴訟法 |
| 一言で | ルールブック | マニュアル |
法律の勉強をしていて、「これってどっちの話だろう?」と迷ったら、
「権利があるかどうかの話なら実体法」
「申請書の書き方や裁判の進め方の話なら手続法」
と考えてみてください。これだけで、法律の理解度がグッと深まりますよ!
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